健康体操と地域コミュニティ

私たちの実践できる筋力運動が、新聞やテレビなどのメディアで頻繁に紹介されます。私はそんな新聞の記事を切り取って、後からじっくり読んで実践しよう、と思い記事を保存しますが、かなりの量がたまってしまい、どの運動から始めればよいか迷います。結果的につん読に終わっているのが現状です。幸い私はほぼ毎日ウオーキングやスロージョギングや水泳などをしています。しかし、このような孤独な戦いがいつまで続けられるか、実は少々不安も感じています。

 一人だけで行う運動は、日々の生活の中で習慣化しなければ、なかなか続けられないものですね。たとえ自分に必要な運動をメディアで見つけて、その運動を一人で初めても三日坊主に終わりがちです。習慣化できる運動はNHKの毎朝の「テレビ体操」や「ラジオ体操」が効果的です。体の一部だけではなく全身的な運動ができることもメリットですし、テレビ体操では画面の中の模範演技を見ながら合わせて一緒にできます。それで正しいフォームを見習うと同時に、一人で運動をする孤独感が少し和らぐと思います。

 日本には地域の子どもを中心にして住民が、朝公園に集まってラジオ体操をする習慣があります。また会社の社員が朝の始業時にラジオ体操をしている様子を、新幹線の車窓から見かけることがあります。公園や会社での体操は、一人だけでは続けにくい運動でも、人びとが集まるとより楽しく持続できる、というコミュニティの効用の一つでしょう。お隣の中国ではお年寄りが朝から公園に集まって、みんなで太極拳を楽しんでいるのも、コミュニティで健康を増進する生活の知恵でしょう。

 さて、子ども時代を過ぎて職場を定年退職して、高齢になっても地域の住民が皆で体操をする活動の場が欲しいものです。そのような活動の一つとして、現在「いきいき百歳体操」が全国1万カ所以上の会場にまで広がっているそうです。この体操は高知市の堀川さんという方が中心になって高齢者用に考案された筋力運動です。行政が主体ではなく、住民が主体になり、健康づくりのみならず地域づくりも目指しています。私の小学校区には4つの町内会があり、3つの町内会の集会所で週に一度、町内の人びとが集まってビデオを見ながら、「いきいき百歳体操」を実践しています。

 私の町内会では、「いきいき百歳体操」の会場の集会所へ行くのも楽ではなかった、自宅の階段を上がるのもきつかった、そんな人がこの百歳体操に通い始めて、集会所に行ける、杖が要らなくなった、という効果を聞いています。一人で運動をするのはおっくう、面倒、横着になりがちなので、自分一人だと運動や筋トレを習慣化しにくのですが、近隣の人たちと一緒に運動をすると、三日坊主ではなく持続しやすいのは事実だと思います。近所の人たちと顔を合わせて、ワイワイしゃべる楽しみもあります。運動は少々きついし初めは辛いことがあっても、人と会える楽しみが付加されると、集会所や公民館へ通うことも習慣化して、運動を続けることができるでしょう。これも地域コミュニティの効用だと思います。コミュニティが必要だからと言って、コミュニティを創ろうとしてもできませんが、楽しいことや自分に役立つ行事に参加することによって、おのずから小さなコミュニティができて、他の活動でまた別のコミュニティができます。両方のコミュニティに参加する人びとがいれば、二つのコミュニティが結び付いて、ネットワーク化して発展する可能性が生まれます。

 「いきいき百歳体操」は地域包括センターが、多くの町内会で実施するよう盛んに推奨しています。広島市では、70歳以上の高齢者が地域の行事に参加すると、ポイントを獲得しそれを現金化できる制度が実施されており、市民におおむね好評です。このように行政はできる限り高齢者の社会参加を促そうとしています。高齢化して家にひきこもっていると健康に悪く、介護される高齢者が増えます。多くの高齢者が理想と考えているのは「ピンピンコロリ」ですが、現実は介護用ベッドに「ゴロリ」することが多いのです。間際近くまでピンピンしていて、最後に「コロリ」となれば、本人は幸せだしパートナーや子ども達への負担も軽減できます。健康寿命を延ばす事ができれば、高齢者自身も周りの家族も介護や医療の財政にも、すべてに良いのではないでしょうか。(中島正博)

追記:この記事の本題ではないのですが、死の前には本人にも周りの家族にも、心の準備が必要ですね。本人が心残りなく死ぬためにも、家族の喪失感を和らげるためにも、ある程度の期間が必要だと思います。少し言葉足らずで申し訳ありません。(投稿後1月25日)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA