ご近所の「ゴミ置き場」の設置と維持・管理の話

地域のご近所で日常的に気になるのはゴミ置き場の状態です。ゴミ置き場に関していろいろの問題があります。例えばゴミを分別しない人がいますし、ひどいのは自分のゴミ置き場ではない地域の人が、通勤の途上なのか車で来てゴミを置いて行くこともあります。さらに生ごみを出す日にはゴミ置き場の状態がいつも心配です。カラスなどの動物が生ごみを散乱させます。そのカラス被害に配慮したゴミの置き方をしない人がいます。つまりゴミをカバーするシートの端の方にポイと置いてゴミがシートやネットからはみ出しそうになっている置き場があります。逆にシートの奥の方にゴミを置いて、カラスがゴミをつつく隙のないよう丁寧にゴミにカバーシートをかぶせた置き場があります。カラスや動物がゴミを漁った後、周辺の掃除を住民がしない置き場もあります。ゴミ置き場の状態には地域に対する住民の心が表れているのではないでしょうか。

ゴミ置き場の位置の決め方には、町内の道で分けられる区画に共同ゴミ置場を設置する場合と、個々の家ごとでその門前にゴミを置く方法があります。自分の門前にゴミを置きたくない住民が多いので、一般の人には前者が好まれるようです。ゴミ収集をする自治体の方針によれば、住民が互いに協力し合える地域コミュニティを創るためには、個々の家の門前にごみを置くのではなく、集合的なゴミ置き場が望ましいそうです。それはゴミ置き場を設置する位置の決定や、置き場の維持管理に際して、住民の合意形成プロセスが必要だからでしょう。例えば災害時には先ず住民の助け合いが必要なので、そのような緊急時に対応できるコミュニティづくりのためにも、住民同士の顔見知りや繋がりが日常的に生まれやすい、共同ゴミ置き場の設置が望ましいと思います。

ゴミ置き場の位置の決定について、そのような合意形成を近隣地域でする機会が私の住む町でありました。街は変化しており、時に何らかの事情でゴミ置き場を変更する必要が生じます。空き地だったゴミ置き場に建築物ができたのです。その建築物の所有者からゴミ置き場を変更するよう、町内会長に依頼がありました。また以前からいつも散乱する他のゴミ置き場への対処も必要でした。

ゴミ置き場のカバーシートやネットは安価なので町内会の費用で調達しますが、ゴミ置き場専用の箱は高価なので自治体から借りることができます。自治体から借りる場合には、役所が定めた手続きが求められます。新しい置き場を利用するすべての関連住民の了解を得る署名が必要なのです。署名をもらうために昼間に戸別に訪問しても、留守で会えない場合が多くあります。さらにゴミ置き場の位置を変更する場合には、町内会の会合を開いて住民の意見を聞きます。関連住民には言いたい放題の発言が現れます。「新たな建築物の所有者はゴミ置き場の存在を知りながら建てたのだから、ゴミ置き場の変更を求める資格はない」という極論、「変更後のゴミ置き場は自宅から遠すぎて不便だ」という意見などの他、好き勝手な発言もありますが、全体をまとめる方向で善意の発言もあります。このような集会によって、自分の近隣には誰が住んでいるか、どんな人が住んでいるか、誰が信頼できそうな人なのか、知ることができます。そのようにして近隣住民を知り合うことも、コミュニティの形成には役立つだろうと思います。

町内会はこのような町内会の出費や手続きを経て、ゴミ置き場の共同施設を町内会で設置するので、厳密に言えば町内会費を払っていない町内会非加入者は共同施設を利用できないことになります。しかし町内会に入ってない場合でも、一般には共同のゴミ置き場の利用を拒否されることはありません。それに対する異論はありますが、町内会は寛容に対処しているようです。ゴミ置き場は私たちが何気なく日常的に使用していますが、その共同施設の設置や維持管理に際して、町内会の人たちの見えない努力や苦労があるのです。(中島正博)

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