認知症にやさしい地域づくりを考える(3)

「広げよう見守りの輪~心でつなぐ、地域でつつむ認知症」の第3回講座が6月3日に私の町で開催されました。今回のテーマは「私たちが地域でできることは何だろう」です。場所は前回と同様に「まちの保健室」でした。

私たち参加者約20人は3グループに分かれてテーブルにつきました。今回はグループワークの前に、近隣の町で認知症カフェ「オレンジャーカフェ」を運営している方のお話です。講座の主催者が私たち地域住民に期待していることが認知症カフェの設置なのでしょう。認知症になると外出頻度が減って、社会参加が少なくなり認知症が進みやすい。それを防ぐには認知症カフェに行き、町の皆さんと交流できれば良いでしょう、と認知症地域支援推進員の方が認知症カフェの意義を紹介した後、「オレンジャーひろば」の運営者がその団体設立の経緯と活動内容を話しました。

オレンジャーひろばの設立は5年前の2018年でした。この話者の母親が認知症であることもあり、カフェ設立のコンセプトは認知症本人や家族の不安や悩みを「言いたい」、みんなどうしているのか「聞きたい」、何ができるかわからないけど「やってみたい」ことでした。この団体の現在の会員は17名で、認知症サポーター養成講座に参加した住民を中心に、認知症の人を家族に持つ人たちです。団体の活動は、認知症カフェの運営の他に、勉強会(老人ホームの種類、ACP人生会議、特殊詐欺など)、認知症の家族の現状・悩みについて意見交換、認知症当事者との接し方の話し合い、認知症講座のPR活動、役員会などです。

オレンジャーひろばは月に1回の認知症カフェを運営しており、そのカフェの活動内容は、調理と食事のテイクアウト、呼吸法体験・コグニサイズ、折紙、糸電話、腹話術、皿回し、ピアノコンサート、ゲーム、お笑いライブ・毒舌漫談など、楽しい集いにするための工夫をしているようです。認知症カフェは作業療法士、地域包括支援センター、認知症サポーター、介護福祉士、認知症アドバイザーなどの専門家の協力を得ています。

オレンジャーひろばの今後の課題は、家にひきこもりがちの地域の人と繋がるために、さらにできることを探したいそうです。しかし認知症の人の見守りが必要なので、あまりたくさんの人がカフェに来ても困るそうです。電話で誘ったり連れ出したりすることもあるようですが、難しい人情の機微があるように私は思いました。既存の認知症カフェの成果や課題に関する評価を学ぶ必要があるだろうと私は思います。

お話の後は私たちのグループワークです。「みんなでつくろう、認知症になっても優しいまち」と題して、参加者が思い描く「私たちの町がこんな地域であったらいいな」、というアイデアや願望を各自が付箋に書いて、地図に貼り付ける作業です。実は、講座の主催者としては第3回のテーマ「私たちが地域でできることは何だろう」に沿って、参加者が主体的に行動できるアイデアを付箋に書いて欲しいのでしょうが、それでは参加者の荷が重くグループワークをしにくいと考えたのではないでしょうか。第3回のテーマと、参加者が書くように求められたアイデアや願望の間には、ギャップがあるように私は思いました。私たちが「願望」することと「私たちができること」のギャップです。

ともあれ私たちは願望を付箋に書いて、冒頭の写真のように地図に貼り付けました。そしていつものように3グループからそれぞれのグループワークの結果を紹介しました。私たちのグループは冒頭の写真の通りです。他のグループからはみんなで気軽に話せる場が欲しい、多世代で交流できる場が欲しい、坂の多い地域では買い物ができる移動手段が欲しい、心と心の触れ合いが欲しい、同じ町内の人たちと一日を仲良く過ごしたいなど、地域の人たちの繋がりや交流を求める声が多数でした。この3回連続講座の意図に合うような、明確に「認知症カフェ」というものを望む声は聞きませんでした。

この町には百歳体操、太極拳、グラウンドゴルフ、麻雀、囲碁、子育て支援など、目的が明確な交流の場はありますが、単に気軽にお喋りをする公的な場はありません。明確な目的をもたなくても気軽に集える交流の空間が望まれていると思いました。我が地域で認知症カフェが望まれているかどうか分かりませんが、まちづくりがこれからどのような展開をするか、私たち地域住民の手にかかっています。今回の講座のアンケート用紙には、今後のまちづくりに協力できる人の名前と連絡先を書く欄があったので、私は自分の名前を書いておきました。主催者から私にコンタクトがあるかもしれません。またご報告します。(中島正博)

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