「シェアリングエコノミー」~環境保全や資源保全と不可分の地域コミュニティづくり

前回はシェアリングエコノミーの起源について、自然資源の持続的利用の観点から紹介しました。現代の資源の利用はいかがでしょうか。個人主義と資本主義の普及に伴って、国家や企業は天然資源を囲い込もうと、弱肉強食の生存競争や資源の獲得競争に明け暮れています。しかし他方では、昔のローカルのコミュニティがそうであったように、国家の枠組みを越えた企業や市民などの主体は、ITの発達を利用してシェアリングエコノミーを再び志向し始めたようです。国際的な民泊サービス、一般のドライバーが自家用車に客を乗せて目的地まで移動するサービス、個人の家事等の仕事・労働のシェアサービス、駐車スペースシェアサービス、個人のモノのシェアサービスなどがインターネットの利用により拡大しています。冒頭に紹介した総務省による自治体向けの政策もこの流れに沿ったものです。その政策は個人の「遊休資産」を利用するサービスです。つまり個人の空き室・空き家、自動車の空席、空き時間、駐車場、モノなどの資源が対象です。

しかし歴史を遡れば人類のシェアリングエコノミーは遊休資産ではなく、山林、土地、水、海など人間の生存に必須の自然資源を持続的かつ共に利用するために生まれました。さらにそれらの自然資源の持続的な利用と、地域コミュニティは不可分の関係にありました。現代の自然環境保全の必要性と、それを実現する主体(力)になる地域コミュニティの必要性を考えると、自然資源や環境資源を持続的に利用するためのシェアリングエコノミーは、遊休資産のみならず人類に不可欠の環境資源そして自然資源の利用にまで拡張すべきでしょう。例えば、温暖化防止の脱炭素社会を築くために、水源林を守り維持管理をするために、水産資源を利用し海洋汚染を防止するために等々、シェアリングエコノミーの観点から都市やコミュニティの人びとが負うべき責任を果たさなければなりません。そのためのコミュニティづくりの観点から、「シェアリングシティ」の認証制度などの動向は大変興味深いと思います。

前回の記事の冒頭に紹介した総務省のシェアリングエコノミー政策においても、遊休資産の活用は限られた資源の有効利用であり、自家用車利用のシェアリングなどは環境のさらなる破壊の緩和(二酸化炭素の削減)に結び付く効果があるでしょう。民泊や古民家の利用、個人のモノのシェアなども、限られた資源の開発の拡大を緩和・抑制できるかも知れません。地域資源を市民がシェアすることで地域コミュニティづくりに貢献するでしょう。シェアリングエコノミーによって、個人主義と市場経済で分断された人と人の壁を低くしながら、地域コミュニティや地域を越えたコミュニティが発展すれば良いと思います。(中島正博)

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