人々の繋がりと孤独に関連する諸要因(2/2)

『令和6年 人々のつながりに関する基礎調査結果』(内閣府)の報告書が今年4月に内閣府孤独・孤立対策推進室から発表されました。前回に続き第2回として残りの記事をご紹介します。第2回は不安や悩みの有無別の孤独感、他者へのサポート意識別の孤独感、スマートフォンの使用時間(画面を見る時間)別の孤独感、孤独感別の生活満足度などのトピックスです。

●不安や悩みの有無別の孤独感(報告書p.31)
「不安や悩みの有無」の質問に対して、「ある」と回答した人の割合は74.4%、「ない」は25.2%となっています。多くの人は人生で何らかの不安や悩みを抱えていることが分かります。孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人は、不安や悩みを感じていることが「ある」で5.3%、「ない」で1.4%となっています。逆に、孤独感が「決してない」と回答した人は、不安や悩みを感じていることが「ある」で14.5%、「ない」で29.9%となっています。従って不安や悩みが「ある」人は「ない」人より孤独感を持ちやすいことが分かります。逆も真です。

次に「不安や悩みの有無」の質問で「ある」(複数回答)と回答したのは8,084人であり、その孤独感別の内訳は、「しばしばある・常にある」431人、「時々ある」1,513人、「たまにある」1,797人、「ほとんどない」3,043人、「決してない」1,176人です。この内の不安や悩みが「ある」と回答(複数回答)した8,084人について、不安や悩みの内容別に孤独感の強弱の回答の割合を見ます。それぞれの不安や悩みの種類ごとについて、孤独感が両極端の「しばしばある・常にある」と「決してない」の割合は以下の通りです(報告書p.32)。

凡例:「不安や悩みの内容」:【孤独感が「しばしばある・常にある」割合%, 孤独感が「決してない」割合%】。

「自分の健康」:【65.0, 56.6】
「家族の健康、介護」:【45.9, 48.2】
「住まい」:【34.6, 14.5】
「進学・就職・転職など、進路やキャリア上の問題」:【33.4, 17.3】
「結婚・子育てなど、生活上の問題」:【23.4, 19.0】
「収入や資産、老後の生活設計」:【67.3, 45.7】
「家族・親族間の人間関係」:【27.8, 10.3】
「近隣・地域との関係」:【13.2, 2.4】
「学校や勤務先での人間関係」:【24.6, 8.5】
「事業や家業の経営上の問題」:【4.6, 5.4】
「金銭トラブル」:【8.1, 1.6】
「自然災害や事故、事件などの被害」:【13.7, 8.8】
「恋愛・性関係」:【13.7, 3.1】
「その他」:【8.8, 4.2】、「無回答」:【2.1, 4.8】

上記のそれぞれの不安や悩みについて、孤独感が「しばしばある・常にある」割合と、孤独感が「決してない」割合の差の大きさを基準にして、以下の①から③のように、それぞれの不安や悩みと孤独感の関連が「ある・無い」あるいは「強い・弱い」と筆者は判断しました。

①関連が「無い」あるいは「弱い」と推定できるのは:「自分の健康」、「家族の健康・介護」、「事業や家業の経営上の問題」、「自然災害や事故・事件などの被害」。
②関連が少し「ある」と推定できるのは:「住まい」、「進学・就職・転職など、進路やキャリア上の問題」、「結婚・子育てなど生活上の問題」、「収入や資産・老後の生活設計」。
③関連が「強い」と推定できるのは:「家族・親族間の人間関係」、「近隣・地域との関係」、「学校や勤務先での人間関係」、「金銭トラブル」、「恋愛・性関係」。

関連が「強い」と推定できる上記③の不安や悩みは、すべて人間関係に係るものなので、他者との関係性に起因する孤独感の有無やその強弱に関連することは了解できます。このことからも人生において、家族、近隣、学校などのコミュニティで良い関係を保つことの大切さが分かります。

●他者へのサポート意識別の孤独感(報告書p.34)
孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、他者に手助けを「しようと思う」で2.9%、「しようと思わない」で8.8%となっています。逆に、孤独感が「決してない」と回答した人の割合は、他者に手助けを「しようと思う」で24.0%、「しようと思わない」で16.6%となっています。孤独感が強い人は他者との係りに消極的なことを、この割合は示しているように思われます。逆も真です。

●スマートフォンの使用時間(画面を見る時間)別の孤独感(報告書p.39)
孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人は467人です。その内、5.2%「3時間以上4時間未満」から6.2%「5時間以上6時間未満」、9.5%「7時間以上8時間未満」、13.3%「8時間以上」などと、使用時間と比例するように孤独感が強くなっています。孤独感の強い人ほどスマートフォンの使用時間の長いことが浮き彫りになりました。SNSによるコミュニケーションが孤独感を癒すからでしょうか。しかし孤独感が「決してない」と回答した人については、使用時間との関連は見られません。これらについては間接質問の回答でも同様の結果が表れています。

●孤独感別の生活満足度(報告書p.42)
現在の生活に「満足している」と回答した人の割合は14.4%、「まあ満足している」 が43.8%となっています。一方、「不満である」と回答した人の割合は5.6%、「やや不満である」が12.4%になっています。孤独感別の生活満足度は以下の通りです。現在の生活に「満足している」と回答した人の割合は、孤独感が「しばしばある・常にある」3.0%から「ほとんどない」15.0%、及び「決してない」33.4%まで、比例的に高くなっています。一方、「不満である」と回答した人の割合は、孤独感が「しばしばある・常にある」37.2%及び「時々ある」10.8%で高く、「たまにある」4.0%、「ほとんどない」、2.3%「決してない」2.9%などと比例的に低くなっています。

傾向としては、生活に満足している人はより孤独感が小さく、逆に、生活に不満足な人はより孤独感が大きい回答結果になっています。この相関はかなり明瞭に表れています。「満足している」と「不満である」の間には、「まあ満足している」、「どちらともいえない」、「やや不満である」の回答がありますが、「満足」と「不満足」の両極端については、孤独感との相関があると言えるのではないでしょうか。やはり「人々とのつながり」は生活の満足に必要な要素であると私は思います。

以上に紹介したのは、「令和6年 人々のつながりに関する基礎調査結果」報告書に筆者が目を通して、感じたことです。「コミュニティづくり」は人々の「つながりと孤独」に関連することでもあるので、報告書から何らかの学びを得たいと思い、報告書を丹念に吟味して記事にしました。(中島正博)

注:第1回の記事の中で、(a)孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人に関する主な属性別の結果において、「心身の健康状態」では孤独と健康の「関連がある」ことが判明しました。しかし第2回の記事の中で、(b)不安や悩みの有無別の孤独感においては、「自分の健康」と孤独感の「関連は無いか弱い」ことが判明しました。この(a)(b)両者は表面的に矛盾しています。その矛盾の原因は以下の通りであると考えます。(a)の割合は、「よくない」「あまりよくない」「ふつう」「まあよい」「よい」などの回答数の内訳として「孤独感がしばしばある・常にある」の割合です。他方(b)では、複数回答で諸々の不安の一つとして、1万人の全回答者(10,871人)の内、約半数(5,101人)の多数の人々が「自分の健康」を挙げています。従って、「自分の健康」と孤独感は関連付けられなくなっていると思われます。結論として、健康と孤独感の関係の有無については、関連があるという(a)が真相に近いと言え注:第1回の記事の中で、(a)孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人に関する主な属性別の結果において、「心身の健康状態」では孤独と健康の「関連がある」ことが判明しました。しかし第2回の記事の中で、(b)不安や悩みの有無別の孤独感においては、「自分の健康」と孤独感の「関連は無いか弱い」ことが判明しました。この(a)(b)両者は表面的に矛盾しています。その矛盾の原因は以下の通りであると考えます。(a)の割合は、「よくない」「あまりよくない」「ふつう」「まあよい」「よい」などの回答数の内訳として「孤独感がしばしばある・常にある」の割合です。他方(b)では、複数回答で諸々の不安の一つとして、1万人の全回答者(10,871人)の内、約半数(5,101人)の多数の人々が「自分の健康」を挙げています。従って、「自分の健康」と孤独感は関連付けられなくなっていると思われます。結論として、健康と孤独感の関係の有無については、関連があるという(a)が真相に近いと言えます。注:第1回の記事の中で、(a)孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人に関する主な属性別の結果において、「心身の健康状態」では孤独と健康の「関連がある」ことが判明しました。しかし第2回の記事の中で、(b)不安や悩みの有無別の孤独感においては、「自分の健康」と孤独感の「関連は無いか弱い」ことが判明しました。この(a)(b)両者は表面的に矛盾しています。その矛盾の原因は以下の通りであると考えます。(a)の割合は、「よくない」「あまりよくない」「ふつう」「まあよい」「よい」などの回答数の内訳として「孤独感がしばしばある・常にある」の割合です。他方(b)では、複数回答で諸々の不安の一つとして、1万人の全回答者(10,871人)の内、約半数(5,101人)の多数の人々が「自分の健康」を挙げています。従って、「自分の健康」と孤独感は関連付けられなくなっていると思われます。結論として、健康と孤独感の関係の有無については、関連があるという(a)が真相に近いと私は考えます。

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