マンション住民の高齢化による孤立を防ぐ取り組み

国立社会保障人口問題研究所は都道府県別の世帯数の将来推計を2024年に発表しました。それによると2050年には、全世帯に占める1人暮らしの割合が27都道府県で40%を超えます。さらに65歳以上の高齢者が1人で暮らす割合は地方を中心に高くなり、32道府県で全世帯の20%を超えます。1人暮らしの孤独や孤立を生まないよう、地域社会で支えあう仕組みの整備が課題です。この記事で紹介する札幌市と京都市のマンションの事例は、防災や孤立・孤独死に備えて高齢者が支えあうコミュニティづくりです。

事例:高齢化によるマンション住民の孤立を防ぐ取り組み:札幌市の築33年100世帯が暮らすマンション。管理組合として高齢者の見守りをしなければならない。高齢化する住人を守るには孤立を防ぐルールが必要。75歳以上で一人暮らしをするマンション住人は、管理人室に毎朝インターフォンで「お早うコール」をするルール。管理人は毎朝、電話の着信記録を確認して、コールが無い場合は部屋を訪ねて安否確認をする。このルールによって室内で倒れていた住人を助けたことが過去3回あった。ルールのポイントは希望者だけでなく、75歳以上で一人暮らしをする全員に従ってもらうと決めたこと。住人を一人ひとり説得した。「面倒くさい、老人扱いされるのは嫌だと心では反発していた。全員必ずコールをすると決められたことが結果的には良かったと思う」と住人。「住人の合意形成は難しいと言われるマンションだが、時には管理組合のリーダーシップが必要だ」と管理組合理事長の町田さんは言う。

京都市には、マンションの住人同士だけでなく、地域住民との交流も深めて、高齢住人の孤立を防ごうとする築40年のマンションがある。高齢化が進む中、多様な問題をみんなで考えるベースとして、先ず住人同士の繋がりづくりに管理組合が取り組んだ。居住者が高齢化して建物も古くなるなかで、いろいろな問題をみんなで考えるベースはマンション内でのコミュニティ。築30年の大規模修繕の時に、交流室と会議室を開放的なガラス張りに改装した。住人主催のカフェやイベントを行い、ご近所づきあい、繋がりづくりの拠点にした。更に、一人暮らしの高齢者が増えたため、マンション住人だけで支え合うには限界があると考えて、近隣地域の住民との関係づくりに力を入れた。交流室を利用したスーパーの移動販売はマンション内だけでなく、近所の住民も利用できるようにした。地元住民とマンション住人との交流ができた。2018年の西日本豪雨では、地域の桂川は氾濫寸前まで水位が上昇した。マンションの頑丈な建物は地域の防災拠点として存在感がある。災害発生時に地域住民がマンションの建物に避難(地域集合場所)できる協定を地元自主防災会と結んだ。日頃の人間関係を築いておけば、マンションの高齢者が避難する際に、地域の人たちがサポートしてくれると考えている。マンションを地域の拠点にして、地域との繋がりをつくることが、マンション住人が地域の中で生きていくために必要であると考えている。

事例から分かること:防災や孤立・孤独死に備えて、高齢者が支えあうコミュニティづくりの事例です。札幌市のマンションでは一人暮らしをする #高齢者の安否確認 をルール化しました。京都市のマンションではマンション住人同士の交流を促進し、さらにマンションの近隣地域の住民との交流も促進しています。両方の事例から、住人同士の繋がり作りのためには、日常的な交流が不可欠であることが分かります。コミュティづくりには「共的な空間」と「繋ぐ人」が必要条件ですが、マンションやスーパーの移動販売所という共的な空間と管理組合の役員がその必要条件に該当すると思います。また住民間のルールや防災協定などの制度も必要条件に含められるでしょう。


上記の事例の記述は、NHK地域づくりアーカイブスの動画(「住人の高齢化と孤立を防ぐ、地域住民との繋がりづくり」2023年放送)を再生し、その解説や会話の音声を筆者が文章にして掲載しました。私がこのサイトに過去掲載した記事「高齢化社会を乗り切ろう!地域コミュニティの生活支援ボランティア活動」も同様に高齢化している団地(記事冒頭の写真)のコミュティづくりの事例です。(中島正博)

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