「過疎地域」や「限界集落」にも希望あり

総務省により全国で過疎指定された797市町村の内、11.7%の93市町村で人口の社会増が起きてる。民間調査機関による分析結果を8月22日に中国新聞が報じたのを見て嬉しく思いました。なぜなら過疎市町村の人口減少は、半ば抵抗できないことのように感じていたからです。このデータは「持続可能な地域社会総合研究所」が、2010年から2015年までの5年間に過疎指定された市町村で、転入者が転出者を上回る人口の「社会増」を実現したことについて、人口分析によって明らかにしたものです。

職を求めて大都市に移動する市町村人口の社会減は、経済至上主義の日本でほとんど避けられないのと私は思っていました。そのような認識は、日本の経済成長に伴って生まれた悲観的な一連の過疎化、限界集落、消滅市町村などの言葉と伴に、半ば諦めの気持ちから生まれたように思います。先の全国的な調査結果によって、そのような悲観から希望的な可能性の方向を見出したのです。たしかに島根県の海士町のように、例外的とも思える近年の人口流入による社会増の例は知られていますが、それは全国的な傾向の一つだと実証するものではありませんでした。

社会増の増加率の高い全国トップ10の自治体の9か所は離島だそうです。離島は高度経済成長の頃から若い人びとが就職で島を離れるため、最も過疎化の影響を受けてきた地域です。過疎市町村の存続が憂慮される以前から、人口減少の先頭を走っていて、存続の危機感に苦しんでいました。離島や離島を抱える市町村がUターンやIターンによる移住促進を進めてきたことが、社会増として今回の研究結果に表れたのです。しかし、自治体によるU・Iターンの促進策のみでは十分ではありません。もし移住地域の旧住民が外来者に対して排他的であれば、U・Iターン者は土地に根付けないでしょう。やはり地域の旧住民がU・Iターン者を受け入れるコミュニティをつくれるかどうかが、これまでそしてこれからの大きなカギでしょう。その意味で人口の社会増を実現した過疎市町村の旧住民には、移住民を受け入れる「コミュニティづくり」の基礎があったのではないでしょうか。例えば、移住希望者に「お試し住宅」を用意しようと、空き家を活用する知人のグループが北広島町にいます。

私の周りの小さな現象を見ても、今回の分析で明らかにされた社会増の結果は不思議ではないようです。例えば、「地域おこし協力隊」として、農村で頑張っている若い人たちと偶然会う機会が多々あります。協力隊への参加は、若い人が理想を追求する気持ちの強さの表れでしょう。全国で耕作放棄地が増える状況において、農村の豊かな自然の中で就農して、子育てをしたい人びと。農村で余暇を過したい都市の人びとを迎え、さらに農村の人びとと交流できるカフェを営みたい人びと。多くの人びとが自分の生き方として農村地域を目指しています。諸々の理由や障害で夢を実現できない人達は、移住者の何十倍も存在します。

民間調査機関の分析結果を報道した中国新聞の記事から、私が日本社会の希望を見出したことについて報告しました。もちろん、この結果だけで手放しで楽観的になることはできません。地道な努力や衆智の先に良き地域社会建設の結果があるのでしょう。(中島正博)

過疎93市町村「社会増」 移住促進策実る | 中国新聞アルファ

過疎市町村の1割「社会増」 移住者獲得で人口減回避、民間団体調査:日本経済新聞 

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