お隣りの鈴が峰町の夏祭りに参加する機会がありました。私の町の町内会の納涼会は町内の組や団体がそれぞれの役割を担って行われます。そのように担当で役割を決めて運営されることは多いのですが、ボランティアのグループが自由な感覚で参加する場があってもよいでしょう。そんなことを思っている時に、耳寄りな話が入りました。隣りの町の夏祭りでは今年初めて芝居をするらしい。それは「鈴が峰劇団」が演じるコミカルな「ヤマタノオロチ」であると。私はそんなグループの練習風景を見たい、できれば話も聞きたいと思い、友人の紹介で練習会場に行きました。そこではすでに台本を使ってセリフの練習がされていました。十数人のグループで「ここはセリフを変えた方が良い」などと、改善のための台本づくりに向けて活発な話し会いもされていました。練習会場の舞台の上には劇団が制作した立派な竜の頭が鎮座しています。その他、竜の胴体や登場する南の国の人びとの衣装など、すべて「劇団」の制作したものがありました。
この町の夏祭りは20年以上続いているそうです。夏祭りは社会福祉協議会が主催して、15の自治会長、15の各種団体責任者、その他、合計32人が「夏祭り実行委員会」を組織しています。多くの団体が参加しているので、夏祭りの内容も豊富で「おやじバンド」、ハワイアンダンス、隣町の太鼓演奏、お化け屋敷、鈴が峰音頭の盆踊り等の他、多くの屋台も店開きをします。
社会福祉協議会の会長さんにそんな話を聞いていたら、「劇団」の役者の数が足りないという理由で、急きょ私にも芝居の出演を頼まれました。当然何の準備もしていないので不安でした。しかし、この町の夏祭りのお話をして下さったので、そのお礼と思い引き受けました。またボランティアグループの性格を知るには、一緒に活動する参与観察が有効です。飛び入り劇団員になったため、初めてお会いした皆さんの練習に夜遅くまでお付き合いしました。そして本番用にセリフの吹込みをしました。セリフを覚えてなくても、本番では口パクパクさせれば良いので大いに安心です。
さらに1週間後くらいに日を改めて練習をして、セリフの吹込み、音楽や効果音の録音などをやり直しました。そして8月5日の夏祭り本番の昼過ぎのリハーサルに参加しました。私はこの町の住民ではありませんが、このように初めて会った住民の人びとと一緒に活動しました。それができたのもボランティアの「鈴が峰劇団」の人たちが開放的な人たちだからだったのでしょう。一緒に活動したからこそ、それを「発見」できたのでしょう。それはとりもなおさず、「劇団」という「コミュニティ」づくりに求められる特性だったのかもしれません。
この町の夏祭りの本番で芝居を演じた後、そんなことを思いながら、すがすがしい気分で歩いて帰途に就きました。「劇団」の一員として芝居を作る、開放的で楽しい経験をすることが出来ました。何よりも知り合いが増えるというのは楽しいことでした。