町内で成年後見制度講演会を開催

「成年後見制度」という言葉を聞かれたことがあると思います。先月はこのサイトで「認知症の人たちと共生するまちづくり」に関する著書を紹介しました。認知症の人たちをこの成年後見制度によって支援することもできます。(この著書には「市民後見人」がまちづくりに果たす可能性が述べられています)わたしの町にある無印良品店のオープンスペースで、社会福祉協議会・公民館・地域包括支援センターの共催により、先日この制度を紹介する講演会が開かれました。この講演会で配布された説明資料を基にこの制度について紹介します。

日本の高齢化に伴って、平均寿命は男性が81.47年と女性が87.57年であるのに対して、健康寿命は男性が72.68年と女性が75.38年なので、平均すると男性は8.79年そして女性は12.19年の健康ではない期間を過ごします。長寿命化の結果、この健康ではない期間の財産管理が課題になりました。大家族世帯であれば、同居している親の世代を子供世代が支えられますが、核家族が一般的になった現在それが難しくなりました。また同居していても親の世話をするために、その費用を親の銀行口座から家族がお金を引き出す際に、躊躇することがあります。また親が認知症と診断されると、銀行は口座を凍結するかもしれません。

そのような場合に備えて、古くなった成年後見制度が改正されて、介護保険法と同時に2000年に現在の制度ができました。成年後見制度は、例えば認知症などで判断能力が十分でなくなった人のために、家庭裁判所に成年後見人等を選んでもらい、本人に代わって(又は本人をサポートして)、財産の管理や契約の締結などを行う制度です。法定後見は、民法により定められた後見制度であり、本人の判断能力等の低下の程度に応じて、後見・保佐・補助という3つの制度があります。この制度では後見人を自分で選ぶことはできません。

先ず「後見」は、判断能力がないために、自分だけで物事を決定することができない場合です。次に「保佐」は、判断能力が低下して、日常の買い物などは自分でできるが、不動産を購入するなどの重要な財産行為は、自分では適切に判断できないために、誰かの援助が必要な場合です。最後に「補助」は、ある程度自分で契約等はできるが、判断能力がやや不十分になり、誰かの支えが必要か、代わりにしてもらう方が良い場合です。これらの3つの制度は、自らの判断能力が低下した後にその利用を検討するものです。

他方、本人の判断能力が低下する前の元気なうちに検討しておく成年後見制度として、「任意後見」という制度があります。これは本人と任意後見人が、公証役場で「任意後見契約」の公正証書を作成することで、財産の管理や身上保護をする人をあらかじめ決めておく制度です。そして判断能力が低下した時点で「任意後見監督人」が家庭裁判所によって選ばれます。この制度では任意後見人は本人が選び、任意後見監督人が任意後見人を監督します。

2021年12月時点で成年後見制度の利用者は全国で24万人(そのうち保佐・補助は僅か)、任意後見は2600人です。この利用者数に対して、認知症の人口は2025年には700万人に達する見込みであり、認知症の人口に対して制度の利用者は非常に少ないことが分かります。このギャップは、弁護士・司法書士・社会福祉士の専門家や家庭裁判所の数が、この制度の需要に対して少ないこと、成年後見制度の使い勝手が悪いこと、等を示唆しているのでしょう。また認知症本人の家族によって、実際の財産管理がされている現実も示唆していると思われます。使い勝手の悪さというのは、例えばこの制度の利用を開始して、成年後見人が一度選ばれると、途中で止めさせるのは難しいことです。制度の使い勝手が良くないので、この制度の見直しが行われるようです。

成年後後見制度に関連するものとして、「家族信託」という仕組みがあります。それは財産を持っている本人が元気なうちに、信頼できる家族や友人に自分の財産の管理や処分を託すという財産管理の契約で、円滑な財産の承継および柔軟な財産の管理・活用を実現できる一つの制度です。家族信託をすることで、本人が認知症になっても、託された側(受託者)が管理して財産の凍結を防止できるので、認知症対策としても注目されているようです。しかし受託者には広い裁量権があるのに対して、それを監督する公的機関がなく、認知症の本人にはリスクが生じます。このようにいろいろな制度にメリットやデメリットがあります。先ずは最寄りの公的な「成年後見利用促進センター」などの助言を得ることが良いようです。(中島正博)

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