
町内会にはいろいろな仕事があります。その仕事は町内会の加入住民の輪番制で行われます。以前、私の町の町内会のことを書いた記事「町内会の行事で役員の負担を軽減する改革」では、町内会のお祭りの行事の一部を外注化した、町内会の改革についてこのサイトで紹介しました。
今回は私の町内にある集会所の清掃の負担の話です。私が住む町の町内会は12の組で構成されています。各組は毎月一度、門前清掃を行っています。集会所の清掃は月一度の門前清掃の日に、12の組の2組が担当するローテーションで行っています。従って年に二度、集会所の清掃の担当が回って来ます。門前清掃をしながら同時に集会所も掃除することは負担でした。それが「しんどい」という声が組長会で聞こえるようになりました。集会所の清掃だけの問題ではありませんが、町内会に入っていると負担になるので退会したいとか、高齢者からは身体的な理由で活動ができず、役に立てないので申し訳ないから退会したい、という声もあります。
以前から、町内会の執行部は役員や会員の負担を軽減する必要性を考えて、それを実行してきました。今回も集会所の清掃を外注する可能性を執行部は考えました。それを探るために、民間の専門業者に集会所の清掃の見積もりを依頼しました。その結果、今まで通り月1回の清掃をしてもらうと、3~4万円/月の費用がかかることが分かりました。もし窓の清掃も含めると10万円/月にもなります。それは町内会の予算ではとても賄えない額でした。
そこで他の外注先を検討したところ、作業所の人たちに依頼してみてはどうか、と町内会長が提案して近隣の障がい者の作業所を紹介してくれました。その作業所に話をすると、集会所の清掃をすることは、作業所と地域との繋がりが生まれるので嬉しいと言われました。月1回集会所の清掃をして、料金は5千円/月ということでした。もともと町内会の住民は掃除機で部屋を掃除して、トイレを清掃する程度の簡単なものでした。専門業者のような完璧な仕事ではなく、素人の掃除でした。外注すれば住民の負担は軽くなるし、作業所の人には喜んでもらえるし、ウイン・ウインだから作業所に依頼することに決まりました。
今回の集会所の清掃の件によって、地域には隠れた社会資源が存在することも分かりました。清掃専門の業者に外注するという商業ベースではなく、作業所と地域との繋がりや、作業所の地域貢献の活動が、町内会の住民のメリットにもなるという関係です。それに似た出来事が他にもありました。公園に花を植えたいという若い人が現れて、最近その人が町内の公園の花壇に花を植えてくれています。以前から自主的に花壇の世話をして下さる町内の人がいますが、町外からも助っ人が現れました。このケースも一市民の積極的な意思と町内の美化が繋がりました。そのように地域の内外には、地域を豊かにする隠れた人材や社会資源が、さらに多く存在するのかもしれません。
そのような社会資源を掘り起こしたいものです。地域住民の「必要」とボランティアによる資源の「提供」を繋ぐ、言わば需要と供給をマッチングする社協の「ボランティアバンク」という仕組みがあります。人間関係が希薄になり、昔のような「井戸端会議」による情報ネットワークが激減した現在では、需要と供給を結ぶさまざまな機会や仕組みを豊かにする必要があると思います。(中島正博)