認知症と思われる人の不自然な挙動を前にして、あなたならどうするでしょうか?「‥だからそれはダメですよ、‥だから違いますよ、でも‥なんですよ。」などと、結果的に相手の意図の否定に繋がる言葉が普通の反応ではないでしょうか。私自身もそう言うと思いますが、それでは問題は改善しないことを認知症サポーター講座で学びました。
人生100歳と言われる人口の高齢化とともに、2025年には高齢者人口の5人に1人、20%が認知症になるという推計があります。認知症になっても、社会の中で安心して生きたいものです。認知症の人が引きこもりにならず、人びとと共生できる社会を築く準備が始まっています。それには人びとが認知症を理解し、該当者と上手にコミュニケーションすることが望まれます。福祉や医療の専門家ではない、地域の住民のボランティアを対象にして、講座を開設して「認知症サポーター」を養成しています。その養成講座に私も参加して、修了したことを示すのが冒頭の写真です。
その「認知症サポーター養成講座」(2019年7月22日)で学習したことはおよそ以下の内容です。ボランティアの住む地域の認知症発症のデータ、小学校区にある地域包括など福祉関連資源の存在、福祉関連の住民団体、認知症カフェの性格や役割。次に、認知症の理解のためにその原因・種類、障害によっておこる行動や症状。そして事例に基づいて、認知症患者とコミュニケーションする際の留意点や心がまえを学びました。
その後「認知症サポーターステップアップ講座」が3課程ありました。第1課程(2019年11月22日)は主に認知症をさらに理解するための医学的な知識、そして認知症サポーターに最も大切なこととして、認知症の人たちとの接し方を経験者の話から学びました。中でも私が重要だと思ったのは、先ず認知症の人にはその人がとらえた「世界(状況)」があること。そこで、私たちが患者に近づき寄り添うことで、認知症の人の「世界」と現実の世界のズレをできるだけ小さくするよう心がけることだそうです。二つの世界が異なったままであると「違います!」、「ダメ!」と否定されて本人は嫌になり、挙句には暴力がでてしまうのです。相手を否定しないためには、知恵を働かせて「嘘も方便」が有効な場合もあるようです。例えば、お酒を望まれた時、白湯をあげても、味が分からない患者だったので、相手は満足してくれたそうです。相手に寄り添えば知恵を働かせる、ということが大切だと思いました。
第2課程は現場の見学実習でした。それぞれの受講者が希望する認知症カフェ、あるいはグループホーム、老人ホームなどを訪問しました。私は認知症カフェを見学しました(2019年12月24日)。そのカフェは月に1度開設され、参加者はフラッと来て、談笑の機会を提供する場でした。カフェには認知症の人、その家族、ボランティア、認知症について知りたい人、などオープンに誰でも参加できます。話題は日常の暮らしのことなど多彩です。認知症に関する相談もできます。私が参加した談笑の場では楽しく会話が進みました。誰が認知症の人か分からないほど和気あいあいとしていました。
第3課程(2020年1月29日)では見学実習を通じて各受講生が気づきや感想を話し合いました。そしてこれまでの講座や実習に鑑みて、地域で認知症サポーターとして自分ができることやグループでできることを話し合いました。そして半年後に再びフォローアップの研修が行われます。私が実行しやすい活動は、実習で経験した認知症カフェに参加すること、あるいは患者さんの傾聴だと思いました。現段階では近隣の認知症の人を知らないので、カフェに行けば認知症の人に会えるし、さらに認知症の現状をもっと知ることが出来ると思います。また認知症の人の家族から何らかの依頼があれば、傾聴活動の機会があると思います。
カフェは現在全国に6,000カ所あり増えているそうですが、月に1度の頻度で開催するにはまだまだ少ないと思いますし、私の町内には存在しません。認知症の人をサポートする仕組みはまだ発展途上であり、今までの経験を踏まえて、その仕組みは今後進化すると思います。患者と住民が共生する社会を創造するために、どのような仕組みを創れば良いのか、それもこれから経験しながら考えたいと思っています(中島正博)。