地域の町内会はいろんな活動をしていて、住民が生活しやすいように、地域福祉を促進し、人びとの交流を盛んにするサロンなどを主催して、コミュニティづくりを活発にできる団体だと思います。また自治体の行政情報を住民に伝える媒介役を町内会・自治会が果たしており、行政側にとっては情報伝達を効率化する存在です。
その町内会への住民の加入率が減少しています。理由はいろいろありますが、そもそも町内会があることを知らない、町内会の役割を知らない、加入しなくても生活できる、また夫婦共働きで町内会の役員ができない、束縛されるのではないかという不安、アパートやマンションに引っ越して来ても周りと交流がない、町内会からのお誘いがない等々でしょう。また町内会に良い印象を持たなかった過去の記憶が、加入を拒んだりさせることもあるでしょう。その結果、行政情報が町内会からスムーズに届かないことも起きるでしょう。さらには町内や近隣の人たちと疎遠になり、災害時などに助け合いのネットワークからもれるリスクが生じるかもしれません。
町内会・自治会のコミュニティに参加することは、個人主義が普及していなかったプライバシーがないような、昔の社会に戻ることでしょうか。もしそうであれば、束縛されるという不安感は自然でしょう。しかし私たちは昔の社会に戻ることはできないはずです。現代は個人主義や核家族が普及し、男女の雇用形態も変化し、他人に頼らずスマホで情報を検索して、必要なサービスはお金で買うこともできます。そんな現代の社会で昔のような生活に戻ることは不可能です。
現代のプライバシーが尊重される社会では、他人にあまり親切にすることは「おせっかい」と見なされることがあるかも知れません。尊重されるべきプライバシーは確かにあります。「おせっかい」かもしれないけれど他人に親切にするか、否、他人様のことには口出しすべきでないか、と迷うこともあります。現代はプライバシーとおせっかいのどちらを選択すべきか悩むことがあるようです。
コミュニティづくりをするということは、プライバシーがなかった昔の社会に戻ることではなく、現代社会の中でバランスのとれた人間関係を築くことではないでしょうか。つまり必要なプライバシーを守りながら、互いに助け合える社会を創造することであり、過ぎた個人主義で失いがちな人間関係を取り戻す道を開拓することのような気がします。逆に親切どころか、少し迷惑になることでも「お互い様」と言いながら許容し合うことでしょう。二つを合わせると、人間社会で親切は互いに必要であり、多少の迷惑は互いに避けられないという、現実を認めることではないでしょうか。
そのように考えれば、コミュニティづくりは古い時代の共同体社会へ戻ることではなく、新しい時代の人間関係を築くことではないかと思いますが、さてあなたはどう思われるでしょうか。