前回(10月14日)の記事に関連する事例を少々挙げてみましょう。一週間位前に興味深いニュースがありました。覚えている方がいらっしゃるかも知れません。とあるスーパーマーケットは開店時間を2時間早めることにしたそうです。朝早くにスーパーの中で馴染みのラジオ体操が始まります。健康志向の高いシニア層が汗を流します。そして店のカフェでコーヒーを飲み、町の人とのコミュニケーションで口の運動もします。それから買い物をして帰るそうです。ラジオ体操は一日に二回行うそうで、中には一日中スーパーで過ごすことがあるという客も。その結果、店の売り上げは伸びたとのことです。
このスーパーとしてはより多くの顧客を獲得するための工夫ですが、地域社会には人々の交流が増えてコミュニティづくりに効果があると同時に、健康寿命を延ばすという地域福祉の効果もあります。スーパーは一言も口を開かなくても買い物ができる店ですが、人の発想や知恵によってコミュニケーションや健康を促進する場に変えられる例として面白いと思いました。個人主義の促進→コミュニケーションの衰退、という市場経済の業態を逆手にとって、コミュニケーションを増やす場を提供したのです。マイナスに見える現実があっても、そこから価値を創造できるということですね。日常に慣れている私達は新たな発想を生みにくいので、逆転の発想という発想法も必要かも知れません。
少し似た例として夏や冬のクールビスやウオームビスがあります。暑さ寒さの日々、エアコンを使いながら、孤独で家にこもっているよりも、人の集まる公共施設や商業施設へ行けば、スーパーは少々寒過ぎるかも知れませんが、一般に適温だし知人に会えば話もできるし楽しい。その結果、精神的な健康も保てるし、さらに自宅の電気代も節約できるというわけです。この場合も諸々の施設が増え続ける現代社会を逆手にとる発想と言えるかもしれません。
しかし、スーパーのラジオ体操にしても、クールビス・ウオームビスにしても、開放的で社交的な性格の人の方がより恩恵を得るでしょう。悲しいかな男性がこもりがちになるのは一般的な傾向のようです。その例に漏れず、スポーツジムやその他に参加しながらも、私だって家の中でこの記事を書いています。日本人男性を社交的にする「発明」が切に求められます。彼らを社交的な行動に導く発明をすれば、日本の高齢者福祉が変わるかも知れません。男性の特性を逆手に取る発想で何か良い知恵はないでしょうか。(中島正博)