10月18日の記事(リーフレット)で紹介した「北広島町お試し住宅溝口889」のお披露目会を10月22日に行いました。北広島町の補助金を頂き、地域住民のボランティアワークも加わって、立派な「お試し住宅」が出来上がりました。平成元年に新築された比較的新しい家です。しかし、空き家になっていたので少々劣化していましたが、快適に住めるよう生まれ変わりました。それまでに、集落に幾つかある空き家を対象に、「お試し住宅」として貸しても良い、という空き家の家主を探し、法律上の条件を満たして、お役所の補助金申請をして、お客さんに利用してもらう際のルールを定めること、などに多少期間がかかりました。
お披露目の会に参加した人たちは、溝口2区の90才を超した最高齢の方々を始めとする住民、当日蕎麦を打ってご馳走して下さる北広島町・豊平の伝統の職人さん、このイベントを手伝ってくれる広島市立大学の学生さん、豊平の近くで別のお試し住宅を管理する責任者、北広島町役場の職員、北広島町社会福祉協議会の職員、そしてこのお試し住宅プロジェクトを推進してきた溝口二区の区長さんを含むボランティアの人たちでした。溝口に近い豊平は蕎麦の産地で、本場の本物の蕎麦を腹いっぱいどうぞ、というありがたいお披露目会でした。皆さん二杯、三杯、四杯と頂きました。
蕎麦談義をしながらおなかを満たした後は、土地のお年寄り方と学生の交流も始まりました。女子学生は「ここに来ると肌が綺麗になる」。どんな食材が良いのかと、学校へ持ってゆくお弁当づくりに大いに興味があるようでした。溝口のお婆さんたちに教えてもらいたいと、笑顔で話が弾んでいました。互いに世代交代(バトンタッチ)をする関係だからか、若い人たちとお年寄りの交流は互いに相性が良いようです。お年寄りにとって実の孫ではないけれど、目に入れても痛くないように可愛いのかも知れません。拡大家族が減って核家族が犠牲にしたものでしょう。地域コミュニティの継続にも良くありません。
最後に溝口のボランティアグループと学生たちの間で、今後の集落との交流や関係の可能性を話し合いました。お試し住宅としての利用者がいない期間には、この住宅の使用についていろんな可能性やアイデアがありそうです。例えば「企業研修」も良いかも知れません。「遠隔勤務」による集落人口増の契機になるかも知れません。学生ならば「ゼミ合宿」も良いでしょうお試し住宅に泊まり込んで、街中のように周辺に気兼ねすることなく、芸術作品の制作に没頭することができます。学生にとって学校は忙しい環境です。沢山の授業のコマが続くので、次の授業になると思考が途切れてしまいます。だから授業の後にじっくり考えたり、話し合ったりする余裕が余りないのです。しかしゼミ合宿をして、次の授業もアルバイトも気にせず、互いのいろんな考えをぶつけ合って、とことん話し合えば、異なる考えも理解し合えるでしょう。理解できれば異なる考えの存在に寛容になります。それはコミュニティや人びとの信頼関係の基礎になるでしょう。人びとの考えは大なり小なり違うのですから、差異が排除されるのを理由に表現しないのは望ましくありません。差異を包摂し差異と共存しなければ社会は息苦しくなります。「空気を読み」表現しない社会は、危険な全体主義の兆候かも知れません。
ここ溝口の冬で雪が降った後の月夜は明るく、遠くの方まで見渡せる素晴らしい景色になるそうです。そして「しんしんと静か過ぎて、眠れないかもしれないよ」。私には想像できません。このようなお試し住宅の豊かな環境をタダのような費用で経験できます。そして集落がより元気になります。私も利用したくなりました。皆様も如何でしょうか。(中島正博)