環境問題を克服するコミュニティの役割

今回は環境保護とコミュニティの関係を考えてみます。コミュニィには無数の役割があると思いますが、その中には私たちの環境を守る役割もあります。なぜなら環境破壊の影響を受ける人びとは、地域レベルから地球レベルに至るまで大変多いので、いろんなタイプのコミュニィから生活環境を守る行動が必要です。環境問題にはゴミ問題などの環境美化、景観の保全、動植物などの自然保護、二酸化炭素による地球温暖化など、あまたの問題があります。その「環境問題」は環境が問題なのではなく、環境に問題を引き起こす「人間の問題」です。だから人間の意識や行動様式を変える作用(制度や文化)が必要であり、制度に実効力を持たせるには、個人の環境意識と同時に、社会やコミュニティの役割が大きいと思います。

身近な例ですが、私たちが住む家の周辺を掃除する「門前清掃」や「町内清掃」が多くの町で行われています。町内住民による一斉清掃という形で、住民が決められた日時に自宅から出てきて、協力して町内や家の周辺を清掃します。住民が一斉に出てくるので、地域の人びとの顔が見えます。町を綺麗にする積極的な気持ちと同時に、近隣住民として互いに協力しなければならない、という義務的な気持ちも働きます。お互いに協力し合うのはコミュニティの隣人の間の暗黙の了解でしょう。近隣の人びとから非協力的な住人だ、というネガティブなイメージを持たれるのは、多くの人は避けたいのです。互いに気持ちよく住むための人びと生活の知恵でしょう。この例は環境の美化に地域コミュニティが力を発揮する一場面です。このような日ごろの交流で生まれる地域コミュニティは、災害時には人命にかかわる大きな力を発揮します。

地域コミュニティでなくても、人が存在するだけでも環境美化に力を発揮します。ゴミのポイ捨ては一般に他人が見ている場では行いにくいでしょう。たとえ捨ててもゴミが見えにくい側溝に、タバコの吸い殻が捨てられたり、人があまりいない場所や山などに、粗大ゴミが捨てられたりするのを目にします。まして知人の多い地域コミュニティでは、できるだけ行儀よく振る舞うのが普通です。人が見ているかどうかで行動が左右されるのは、あまり良くありませんが、私たちは聖人君主でないので人情として理解できます。そのような人の心理に訴える「Magic Eyes」(マジックアイズ)という言葉で、環境美化の運動をしている団体「タイ環境とコミュニティの開発協会」がタイ国に存在します。その団体のロゴ(冒頭の画像)は人びとの行動を監視している「魔法の目」を象徴したものです。

欧州連合(EU)は先日12月19日に、使い捨てプラスチック製品の域内流通を禁止する規制案に暫定合意しました。プラスチックのゴミが海洋などの自然環境を汚染していることが明確になったからです。汚染の事実が社会に周知されるに従って、プラスチックを使い捨てる私たちの行動や生活様式が問われるようになります。そんな生活行動様式を改善する際にも、個人の良識が根本的には必要ですが、それのみでは不十分でしょう。スーパーなどでの買い物や家庭での消費の場において、コミュニティの人びとが私たちを見る目、人びとから見られている私たちの意識が、使い捨てプラスチックなどの使用を減らす方向に、力を発揮するようになると思います。また、地球温暖化防止の生活行動様式は今後さらに強く求められるでしょう。不要なエネルギー消費の改善も求められ、コミュニィや人びとの互いの協力が必要になるでしょう。

私たちの生活や行動様式を改善するには、そのための手段が必要です。使い捨てプラスチックがスーパーに溢れている現状では、私たちの消費行動を変える可能性が限られます。そのような商品を売る企業を変えなければなりません。より良い環境を望む私たちは、商品を選択することによって、企業に影響を与える力があるはずです。また企業の方針を変える方向へ諸制度を整備するよう、政治を動かすことにも、市民やコミュニティの力が必要でしょう。やはり私たち自身が変わらなければならないのだと思います。(中島正博)

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