西日本豪雨の被災と復旧の語り部に代えて~第8回 12月の1カ月間

今回、注目するのは豪雨災害後、約6カ月目の12月の1カ月です。中国新聞朝刊から作成した災害関連記事の見出しデータの表を文末に掲載し、それに基づいて被災から復旧に向けた出来事を解説します。

鉄道は福塩線の府中~上下が再開し、全線が161日ぶりに復旧しました(14日の記事、以下同様)。 呉線の安浦~三原が再開し、全線が163日ぶりに復旧しました(16日)。山陽線と呉線は落石が続く徐行運転区間に落石検知装置を設置して、2019年3月に正常ダイヤに戻ります(15日)。芸備線の備後庄原~備後落合が再開しました(21日)。芸備線の全線復旧は2019年秋ですが、代行運行をしているバスの下深川~志和口の最終便が、1時間延長されることになりました(7日)。瀬野川に沿う国道2号線の護岸工事に本格着工し2019年7月に完成する予定です(29日)。県内に残る唯一のボランティアセンターである広島県坂町の拠点が12月8日に活動を終了しました(8日)。民営のボランティア拠点「小屋浦サテライト」は、12月も年明けの1月も日々寄せられる土砂除去や家財運搬の依頼に応える作業を続けます(21日)。広島県呉市市原集落の「避難準備・高齢者等避難開始」が解除され、県内の避難情報がすべて解除されました(27日)。広島県内で初めての災害関連死が東広島市で3人認定されました(28日)。

被災者の生活再建を支援する仕組み「広島モデル」が、県と13市町が設けた「地域支えあいセンター」において確立されました(25日)。「弁護士や建築士、介護福祉士など法律、技術、福祉といった幅広い分野の専門家の派遣と、保健師たちが務める相談員による被災者の戸別訪問の徹底」(中国新聞2018年12月25日)が広島モデルの特徴であり、孤立を防ぐコミュニティづくりも一体的に進めます。住宅金融支援機構中国支店が被災者の住宅の建て替えや補修に必要な資金の融資相談窓口を設けています(22日)。大きな災害に遭ったとき、家や車、教育などのローンが減免されるローン減免制度が紹介されました(22日)。全半壊家屋の解体を検討中の被災者に配慮して、広島県海田町が家屋解体費の申請期限を延期する決定をしました(27日)。住まいやローン、保険など豪雨被害で生じた問題の相談が絶えないため、広島弁護士会は期限を延長して2019年1月以降も無料相談に応じます(31日)。

復興や支援のイベントも催されました。安芸中野駅で商店街が復興をアピールしました(1日)。東広島市で商店街が着々と営業を再開しています(5日)。福島県のフラガールが広島県坂町の仮設住宅で励ましの舞を踊りました。EXILEが矢野中学校を訪問し、生徒とダンスをしました(20日)。広島交響楽団が鎮魂と復興の希望を奏でました(30日)。

12月は被災と復旧の「検証」記事がさらに増加して、20の検証記事が掲載されました。連載記事「救助者が見たあの日」の検証は11月から続いています。その第4回は自らも被災しながら命懸けで救助に奔走した地元消防団。団の犠牲者も出して活動指針を初めて作成することにしました(1日)。第5回は被災して流されたマイカーが救助や復旧を阻み、法律(2014年の改正災害対策基本法)で撤去した車は広島・岡山両県で約6000台に上り、車社会のもろさが浮き彫りになったことです(2日)。第6回は酷暑の現場で黙々と救助や行方不明者の捜索をする自衛隊の存在に注目しました(3日)。第7回は4年前の広島土砂災害の教訓を胸に、広島市消防局が救助活動のマニュアル改正や訓練を行ったこと。そして豪雨災害の6、7日に救助した人は約300人に上ったことです(4日)。第8回は全7回の連載から浮かんだ課題であり、救助する組織は大規模災害時に、出動する現場に優先順位を付ける仕組みを検討すること、および救助側の安全を高めることでした(5日)。

その他の検証記事は以下の通りです。広島県熊野町「大原ハイツ」で消防団員の避難誘導に応じない住民がいたことから、情報・意識を共有することの大切さが確認されました(6日)。広島県内の市町が指定した避難施設のうち82カ所が、川の氾濫で一時孤立するなど、被災したことが判明しました(7日)。県立広島大の防災社会システム・デザインプロジェクト研究センターが、避難行動や仮設住宅での生活に関する調査を基に、高齢者の避難を強く意識した官民のサービスや避難保険や避難情報の用語の共有などを含む、14項目にわたる提言をまとめて県知事に提出しました(8日)。広島県熊野町の住民団体が、災害の記憶の風化を防ぐために、被災団地に献花台を設置しました(11日)。政府の中央防災会議の住民避難対策を考えるワーキンググループは、従来の行政主導から住民が主体となった対策へ転換を求める報告書案を固めました。また行政の情報発信の在り方を見直し、大雨防災情報を危険度で5段階に区分する方向性も確認しました(13日)。

検証の連載記事「よみがえる団地」の第3部では、広島県熊野町の団地「大原ハイツ」の「復興の会」が、住民の結束を目指して試行錯誤し、未だ遠い再建の現状に焦る住民の様子を紹介しました(16日)。その大原ハイツで被災の恐怖が癒えないために、苦渋の転居を強いられる復興の会のメンバーの姿も追いました(17日)。熊野町北部の葵団地の自主防災組織や大原ハイツの自主防災組織結成の動向や、「復興の会」と行政が住民代表と位置付ける「自治会」の連携に向けた課題も紹介しました(18日)。「年の瀬に」と題した検証の連載記事が、生活再建への不安、癒えぬ心の傷、復興への願いなどさまざまな思いを胸に、新たな年を迎える被災者の姿を追って、5回掲載されました(25、26、27、28日)。同じ「被災者」でも、年齢、家族構成、経済状況によって、人々の悩みや苦労は多様です。したがってきめ細かい支援が必要であり、「地域支え合いセンター」は各々の被災者に寄り添える仕組みとして期待されています(29日)。

中国地方10~12月期の景況感は、豪雨災害の影響が薄まり半年ぶりに改善しました(12日)。宮島観光の来島者は、天候に恵まれ紅葉シーズンも長続きして、11月は過去最多でした(12日)。中国地方の10月の鉱工業生産指数は、前月より6.0%増となり西日本豪雨前の水準に迫りました(13日)。中国地方の12月の日銀短観によると、西日本豪雨の影響が薄まり、3期ぶりに改善しました(15日)。

以上のほかにも、本文の後に掲載した表「記事見出しデータ」から分かるように、被災と復旧に関連する出来事が報じられました。

(中島正博)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA