第3回 公園再生、地縁団体、そしてコミュニティづくり~公園再生から発見したこと~


さて連載第1回の予告編で紹介した本題の一つ、広島市の「身近な公園再生事業」について述べたいと思います。私はこの事業に応募した49の地域団体を訪ねてお話を伺いました。綺麗に整備された町の小さな公園。その存在の背景にはさまざまな物語が隠れていました。公園の訪問と聞き取りは、公園や町の外観からは分からない、私の全く知らない話が聞ける宝探しのようでした。さて連載第1回の予告編で紹介した本題の一つ、広島市の「身近な公園再生事業」について述べたいと思います。私はこの事業に応募した49の地域団体を訪ねてお話を伺いました。綺麗に整備された町の小さな公園。その存在の背景にはさまざまな物語が隠れていました。公園の訪問と聞き取りは、公園や町の外観からは分からない、私の全く知らない話が聞ける宝探しのようでした。
広島市が「身近な公園再生事業」の募集をした時、どのような地元団体がそれに応募したのでしょうか。まず町内会長が事業について知らされて町内会に諮ります。その町内会の声掛けでボランティアグループが生まれるパターンが多いようです。グループは町内会の役員の場合もあれば、公園周辺の近隣住民の場合もありました。例えば西区では「園芸クラブ」(横川第二公園)、「花咲かせ隊」(田方第一公園)、「花クラブすみれ会」(もみじケ丘第二公園)などとグループを作り、あるいは元々あるボランティアグループが公園再生に取り組みました。役員は町内会の仕事ですでに忙しい人たちですから、このように町内の一般のボランティアがグループを作って事業に取り組む方が望ましいでしょう。町内会長や役員のみが事業に参加することは、町内のボランティアグループの不在を表しているようで、それは町内会の一般の活動の制約になっているかも知れません。

最も多い類の公園の再生活動は予算(最大10万円)の範囲で可能な花壇づくりでした。他に除草、整地、植栽、フェンス修理、遊具の塗装、施肥、テニスコート補修など、公園によってさまざまです。一つの事業は単年度で終わりますが、毎年でも異なった類の活動の申請が可能で、5年間連続で再生活動を重ねている公園もありました。地域の人たちの積極性で少しずつ公園の改善を続けられるのです。公園を再生する際に多くの公園は雑草で使いにくい状態だったようです。そんな時に最も活躍する人たちが、公園でグラウンドゴルフをする老人会のグループです。さらに公園の草取りを町内一斉清掃の折に行う町内会もあります。公園の利用者たちが掃除をすれば、公園を綺麗に使おうという気持ちになるはずです。

西区横川第二公園(花壇整備)はビル街の憩いの場

私の聞き取りでは、感心させられた隠れた人たちの物語がありました。「公園の守り人」とでも呼びましょう。訪問した49の公園の内、少なくとも10程度の公園では、1人から数人の高齢者が毎日掃除をしていたのです。そして公園トイレにトイレットペーパーを補給していました。またトイレを毎日ピカピカに掃除されるボランティアもいました。町の人たちが公園を気持ちよく使えるようにと、そんな活動を毎日何年も続けていました(例えば中区橋本町公園)。「社会に対する恩返しです」と言われる方もいました(例えば佐伯区三筋公園)。町内会や老人会で公園清掃を担当している人もいました。もし公園に作業服で掃除している人がいたら、区役所から派遣された業者だろう、と私たちは思うかもしれません。しかし、私たちの町の有志が利用者のために、無償で公園を綺麗にしていると知ったらどうでしょう。公園にポイ捨てをする人は減るでしょうし、自分も公園を綺麗にしたくなるでしょう。そして「わが町の公園は自分たちのもの」という意識が芽生えると、多くの住民がささやかな「公園の守り人」になるでしょう。住民に愛される公園では、そのような名もない多くの利用者が、ゴミや犬の糞を拾ったりして、公園を綺麗に保っていることも分かりました。
このような公園再生事業の結果、どのような変化が起きたのでしょうか。良く聞かれた声は先ず「草ぼうぼうだった公園が使いやすくなり利用者が増えた」のです。個人で公園を使う時に子供も大人も利用しやすくなったし、町内会の行事が出来るようになった公園もたくさんあります。また、花壇で花の世話をしている時、公園に来た人から「綺麗な花ですね」、「お疲れ様です」と言われ、互いの声掛けのきっかけにもなりました。そんな会話が公園ボランティアの人たちの最大のやりがいになっています(ほとんどの公園)。このように公園がより多くの人びとに使われるようになったことが、コミュニティづくりに役立っています。さらに、実際にポイ捨てが少なくなった公園も多くありますし、トイレが綺麗になり使いやすくなった公園も多くあります。美しい花壇ができて綺麗になった公園は、町の魅力になり住民の誇りにもなります。住民の意識が変化したのです。西区もみじケ丘第二公園では、園内に集会所はありますが狭いので、テントと机・椅子を公園に設置して、住民の交流をしやすくする工夫をしていました。

西区田方第一公園(花壇整備)ではコミュニティづくりがテーマ
安佐南区山本第五公園(花壇づくり)でコミュニティづくり

しかし、公園は誰でも利用できるオープンな施設ですから、100%理想的な公園は存在しません。美しい公園でもポイ捨てする人はいますし、犬猫の糞尿に悩まされる公園もあります。それが減ったとはいえ皆無にはならないのです。そんな中で、幼児が遊ぶ砂場を犬猫から守り衛生的にする努力を重ね、網とロープを使って進化を重ねて完全な対策を考え出したのは南区の仁保公園です。このような問題解決の努力がコミュニティを育みます。下の写真を見ると「公園の守り人」たちの熱意が伝わってきます。この例ほど完全ではなくても、網を使って砂場を守る公園は他にも散見しましたが、現実は対策をしない公園の方がまだ多いようです。

南区仁保第二公園(花木・花壇整備):糞害に悩む公園の例
南区仁保公園(花壇整備)は家庭的な公園がテーマ
南区仁保公園(花壇整備)の思いの詰まった砂場

公園再生事業とコミュニティづくりが繋がっている例を挙げます。西区の太田川緑地グラウンドゴルフ場(河川敷)は一般の街区公園とは異なりますが、大芝グラウンドゴルフ同好会(当時48名)が公園再生事業を利用して、太田川緑地グラウンドゴルフ場の刈り込みなど、芝の保守管理をしました。私が注目したいのはこの同好会が町内会や学区の活動の中核を担っていることです。この同好会や老人会が町内のイベント活動で 人集めの役割を果たして、近隣の人びとの交流つまりコミュニティづくりが盛んになりました。多くの町内会では引きこもり高齢者が多いことに頭を悩ましていますが、大芝では高齢者自身が町内の活動を活発化する原動力になっています。例えば、町内活動は町内一斉清掃、とんど祭り、秋祭り、亥の子祭、輪くぐり祭り、盆踊り、地蔵祭、子供スポーツ大会など。学区体協は年間25のスポーツ活動と他にクラブ活動育成指導や10種類のスポーツ教室などを行っており、大芝ほどスポーツ活動が盛んな町は他にありませんでした。地域のさまざまなスポーツ活動によりコミュニティづくりが行われ、スポーツ以外でも例えば災害時の避難体制もできています。これは地元のサークルや同好会などのグループが地域のボランティア活動に参加して、町内のコミュニティづくりを促進した好例であると思います。それについては2017年11月17日の記事「町内会・自治会の持続可能な発展のために」で強調しました。

西区大芝の太田川緑地(芝の保守管理)でグラウンドゴルフをする同好会の人たち

次回の連載第4回では、町内会などの地縁団体の活動とコミュニティづくりに関連する全体的な傾向を紹介します。そして第5回では、コミュニティづくりの課題に挑戦する幾つかの興味深い個別の物語を紹介します。(中島正博)

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