第4回 公園再生、地縁団体、そしてコミュニティづくり~全体的な傾向~

前回紹介したように公園再生の活動について、私は地元の団体を訪問してお話を伺いました。また同時にその町の町内会を始めとする地縁団体のさまざまな活動についても聞きました。今回の連載第4回ではそれらの地縁団体から伺った、コミュニティづくりに関連する全体的な傾向を紹介します。町の幾つかのタイプについて第2回で述べましたが、訪問した49の公園を管理する団体はおよそ以下のように分類できます。町内会・自治会(26)、老人クラブ(6)、ボランティアグループ(13)、スポーツ同好会(2)、その他(2)など合計49の団体です。また団体の所在地は広島市の西区(11)、佐伯区(9)、中区(14)、南区(9)、安佐南区(6)の5区に位置しています。町の立地の観点から、訪問した地域はおよそ次の表のようなタイプに分けられます。

各区における地域(町)のタイプ (町の数)

西区 佐伯区 中区 南区 安佐南区
平地型住宅地域
団地型住宅地域
商業/事業所型地域

平地型住宅地域の多くは戦前あるいは戦後を通して在来の町です。新しい団地型住宅地域では、開発時期のもっとも早い1960年代の地域は2つあり、1970年代3地域、1980年代8地域、1990年代1地域、2000年代1地域です。第2回で触れたように、広島市は平地が少なく、デルタ周辺の丘陵地に住宅地域が拡大しました。

コミュニティづくりに関連する側面として、それぞれの町では以下の項目について聞き取りをしました。集合住宅(マンション)の多寡、住宅団地の開発年、町内の全世帯と町内会加入率、ここまでは連載第2回で紹介済みですが、さらに高齢化傾向、新旧住民のコミュニティ形成、コミュニティ形成拠点、町の主な課題、町内会活動者の多寡、ボランティアグループの存在、地域サークルの多寡、老人会、子供会、高齢者と子供の交流、サロン活動、町民交流、町内イベント、イベント参加者の傾向などです。第2回で報告した項目を除き、今回はそれぞれの項目について訪問した地域49か所の全体的な傾向を紹介します。聞き取りをしたのは、すべて公園再生事業に応募した町なので、その住民はまちづくりに比較的活発であると思われます。

高齢化傾向について見ると、古くからある平地の町は高齢化が進んでいますが、古い町でもマンションが増えた町は若返っているところ(例えば西区大芝)があります。開発の新しい住宅団地は若い世帯が多いですが、1980年代とそれ以前に開発された団地では高齢化が進んでいます。しかしその中には、少ないながらも若返りをしている団地もあります(例えば佐伯区城山二丁目)。新旧住民のコミュニティ形成について見ると、全体的には新住民は旧住民のコミュニティに加わらず、新旧住民のコミュニケーションが余りないようです。但し子供を持つマンション住民が、旧住民中心の町内会に積極的に参加することはあります。

コミュニティ形成の拠点は圧倒的に集会所ですが、公園と集会所が一体になった町は多くあり、両者の役割は異なるので補完関係にあると言えるでしょう。しかし「集会所が町の中に無い、あるいは遠い」という悩みは、マンションやオフィス街の多い中区で聞かれました。他に重要なコミュニティ形成拠点として、小中学校の存在も忘れてはならないでしょう。

地域課題は千差万別なので紹介しきれませんが、最も多いのは、「住民のコミュニケーションが無い」とかコミュニティの形成、そして高齢者の言わば引きこもりなどです。町内会の活動者の充足について見ると、活動者が明確に不足しているのは10町内会であり、足りているのは8町内会でした。但し、49のサンプルは公園再生に取り組んでいる積極的な町であることに留意が必要です。つまり積極的であるほど、より多くの活動者が必要です。

ボランティアグループについて見ると、老人会(例えば児童登下校の見守り)、おやじの会、母親クラブ、花壇の世話をするグループなど、ほとんどの町には何らかのボランティアグループが存在しています。但し、町内会、老人会、女性会などの役員が、他のボランティアグループでも活動しているケースは多いようです。地域サークルやクラブの存在を見ると、老人会系の囲碁の会の存在が最も多く、カラオケなどを含む多様なサークルがあり、老人会や女性会を基盤に活動している例もありましたが、サークルやクラブの存在が不明な町も若干ありました。老人会は無い、廃止した、消滅した、解散した、という町と不明なケースが若干あります。団塊世代や高齢化社会で老人会の人数は増えるはずですが、男性の老人会加入者や活動参加者は減少傾向のようです。コミュニティ形成の中核を担うことが期待されるだけに、何らかの工夫が必要だと思います。広島市では町内活動やボランティア活動に参加する高齢者に対して、換金できるポイントを提供する福祉事業が2017年度から始まりました。

子供会の人数について見ると、少子化の影響による減少は明らかで、子供会の単位になる地域の範囲を連合町内会や学区単位に拡大したケースがかなり見られます。例外的には、マンションができたために、子供会消滅の危機から、逆に増加に転じたケースがあります(例えば西区大芝)。子供会への加入児童数に影響する子供会役員について見ると、親が共働きなのでその役員になることを忌避し、親の都合で子供会に入れない子供が多く存在します。共働き家庭の増加と共に、子供会役員は明らかに不足しています。そのような理由で子供会役員がいないため、町内会や他団体の役員が子供会の世話をする例も幾つか見られます。

高齢者と子供達は自然に交流できる相性の良い関係のようです。子供たちが自分の町を「故郷と感じて欲しい」と思う高齢者は特に団地に多いようです。最も多い高齢者と子供たちの交流は児童の登下校の見守りですが、別のふれあいの機会を設けている町も幾つかあります。ある町(例えば中区光南町)では公園の花壇の世話を、三世代が交流できる機会にしています。また敬老会や「おもちゃ病院」(中区吉島西)は高齢者と子供達の交流の場です。高齢者の中でも特に一人暮らしの高齢者の見守りや触れ合いのための、(いきいき)サロン活動はほとんどの町で行われています。他方、高齢者のプライバシー意識が理由で、見守られるのを嫌う傾向が高齢者の側にあり、一般的な課題になっています。

町民交流の活動は町内会の最大の仕事として、とんどや夏祭りなどはほぼすべての町内会(あるいは連合町内会や学区)で行われ、積極的な町内会では工夫をして新しいタイプのイベント(例えば月見会)などが実施されています。(門前清掃ではなく)町内や公園の一斉清掃を、町民が互いに知り合う機会ととらえて、実施している町内会もあります。町内イベントの参加者の傾向として、「参加者はいつも同じ」であることが、主催する町内会の共通の悩みです。例えば「町内会の組長さんは新しい人を二人以上誘う」という町内会(南区山城町)もありました。

今回紹介した内容は全体的な傾向なので、どこの町でも共感できる課題が多いのではないかと思います。しかし、すべての町にはそれぞれの「物語」があります。次回の連載第5回では、町内の課題を積極的に克服している、個別の地縁団体の「物語」を紹介します。(中島正博)

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