コミュニティづくりと子ども達の遊び場~米国「KaBOOM!」の事例と日本での可能性

今回はアメリカ合衆国の子ども達の「遊び場(公園)」づくりのお話です。子ども達のためにアメリカのNPO法人「KaBOOM!」が公園作りをしています。KaBOOM!のサイトを参考にして紹介します。日本にはあまり馴染みのない話ですが、 近く国会に提出される所有者不明地に関する新法案 によって、日本でも市民のために「所有者不明地」を使える可能性があるので、私達にもKaBOOM!の例が参考になると思います。

まずアメリカのKaBOOM!による子どもの遊び場(park、playground、playspace)作りの話です。アメリカの子ども達の4人に1人は、家庭でも、学校でも、コミュニティでも、心身の成長に必要な運動の場所や機会に恵まれていません。「遊び」は子どもの平等に係ることです。家庭が貧しくて全米1400万人の子どもが満足に遊べません。KaBOOM!は1995年の設立以来、2017年末までの20年余りの間に、全米3,000か所に遊び場を独自で作り、他に贈与も含めると17,000か所の遊び場を作り改善しました。

「全米のすべての子どもたちの徒歩圏内に遊び場を作り出すこと」がKaBOOM!のビジョンです。創造力や想像力を駆使して、移動できる遊び場さえ作ります。自治体当局と話し合って、歩道やバスの停留所や空き地でも遊び場に変えます。KaBOOM!の「どこでも遊ぼう」という発想や贈与プログラムで、KaBOOM!は低コスト化、移動式の遊び場づくり、面白い遊びづくりなどに向けて、いろんな問題や障害を克服します。

遊び場そのものはなんと一日で完成します。但し、その前に住民を巻き込み、計画を作り、子どもたちにも希望を聞きます。そして資材を集めて、建設の方法を決めたら、「建設の日」を決めて、その日に地域住民やボランティアで遊び場を一気に作り上げます。「KaBOOM!」という言葉は、日本の漫画に出てくる「ドーーン」という英語表現で、遊び場が一日でドーーンとできるのです。KaBOOM!が提供するのは遊び場だけではなく、コミュニティを再生・創造することも強調しなければなりません。つまり地域住民が一体となり遊び場づくりを計画し、子どもたちの希望を取り込んで、「建設の日」にはみんなで力を合わせて作る、という一連のプロセスを地域で行うことにより、コミュニィの再生と創造を実現するのです。

すべての子どもたちが健全に成長するために、バランス良く活動的に遊べるコミュニティを創るノウハウ、リーダーシップ、アシスタンス、アドバイスなどを、自治体はその専門団体のKaBOOM!に求めます。遊び場があることは自治体の魅力です。KaBOOM!の支援で、いろんなコミュニティの間の遊び場の不平等をなくそうとするのです。KaBOOM!の活動は子ども、家族、コミュニティに良い影響を与えて、すべての空間を活動や感動や発見の場にする方法を革新的に全米に広めています。電話や電子メールやソーシャルメディアでKaBOOM!と繋がれば、子どもがアメリカのどのコミュニティに住んでいても、すべてのコミュニティを元気づけて、安全な遊び場で子どもを元気にできるのです。

最後になりましたが、このような自由な遊び場づくりが日本でできるでしょうか?最近の報道によれば、日本政府は所有者が分からない土地への対策を進めるため、関係閣僚会議の初会合を首相官邸で開きました。所有者不明の土地に「利用権」を設定して、広場などに活用するための新法案を1月22日召集の通常国会に提出するなど、新しい制度の準備状況などについて確認したそうです。

新しい制度では所有者が分からず放置されている空き地などに、所有権はそのままに利用権を設定して、民間業者やNPO、市町村が公園、イベント広場などに活用することが考えられています。アメリカのような「遊び場」であっても利用できるよう、柔軟な制度を期待したいと思いますが如何でしょうか。高齢化社会の日本では、高齢者が交流して健康づくりをする遊び場の知恵が生まれるかも知れません。所有者不明の土地は総面積が九州よりも広い約410万ヘクタールに上ると推計されています。さらに高齢化の進展に伴って大量の相続が発生し、所有者不明地は今後さらに拡大する可能性があるようです。(中島正博)

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