町内会の加入率は減少傾向 ~町内会は時代とともに進化が必要か~

今回は研究所代表の私が甥のOさん(40代男性)にインタビューをしました。町内会に関する意識の違いがあれば、それも探ってみたいと思います。時代は大きく変化しているので、町内会も今後進化しそうです。その方向を考えるヒントになるかも知れません。

中島)
町内会の目的を住民の立場から一言でいえば、安心/安全/幸福に住める町を、住民が共同でつくることだと思います。それは町の資源(道路/公園/集会所/資材機材などのハード)を共同管理する事や、安心/安全のために住民の助け合いの仕組み(ソフト)を作る事や、イベントなどを実施して隣人や町民と仲良く生活する機会を提供することだと思っています。ところが特に若い人の町内会への加入率が減少しています。それにはいろんな原因があると思いますが、若い人の一人として何が原因だと思いますか。

Oさん)
自分が住む街を良くしたいという思いは、誰もが持つものだと思います。その方法の一つとして、町内会での活動が有るというのもなんとなくですが、理解しています。
ただ、自分の場合は、今住んでいるこの街で生まれ育ってきたわけではないので、この地域の町内会の様子をそこまで細かく知らないんですよね。どんな人が参加していて、どんな事をしているのかとか。あまり良くわからない所に、積極的に自分から「入れてください」とは言いづらいというのが、僕が町内会に加わってこなかった一番の理由かもしれません。近所の人づてにクチコミで町内会の様子を聞く機会があれば良いのかもしれないですが、生活スタイルの違いや配慮などもその機会を減らしている原因かもしれないですね。
個人的には、町内会や自治会がオープンにインターネットで情報発信をしてくれると「あぁ、そんな活動をしているのか」という理解も得られやすいんじゃないかなと感じています。

中島)
あまり知らないのに町内会に「入れて下さい」と言いづらいのは良く分かります。今は転勤や自分の好みで住む町(街)が変える時代ですからね。どんな町内会なのか事前に知らないのは普通だと思います。人の移動性が高くなったこと(都市化)が、越してきた人と元からいる住民の距離を離す傾向になっているのでしょう。向こう三軒両隣に挨拶をして、コミュニケーションをする習慣も廃れそうですしね。

新たな隣人になった人々への町内会の対応はさまざまです。新住民が戸建ての場合は個々に加入を依頼するでしょう。その場合は聞かれれば、町内会の様子を先ず説明すると思うので、加入を断る理由がなければ問題はないでしょう。しかし断る事情が存在する場合もあります。例えば町内会に加入すれば、何年かに一度は世話役を求められますが、やむを得ない事情があってそれができない、あるいは(世話になっても)世話役になることは嫌、と言う人も残念ながら増えています。どんな理由でも強制力はないので加入は自由ですが、定着性の高い戸建て住民は、隣人との摩擦を好まないこともあり、一般的に加入されます。

しかし、マンションなどの集合住宅の場合はいろんなケースがあり複雑です。町内会に入ってもらう依頼をしたく思っても、オートロックのマンションの建物に入りにくい場合があります。マンションのディベロッパーの方針で入居者全員が加入している場合や、加入は個々の入居者に任されている場合もあります。全員加入方針の場合は必ずしも入居者の意思ではないので、加入は形だけで町内会に無関心の人も多く含まれています。この辺りの事情は去年11月と12月のこのサイトの連載記事で、幾つかの事例を紹介しました。Oさんが言うように引っ越してきた若い人と、土地に長く住んでいる住民の生活スタイルが異なり、コミュニケーションが少ないのは事実だと思います。

そんなこともあり、「町内会や自治会がオープンにインターネットで情報発信」をして、先ず町内会について知ってもらう努力は必要だと僕も思います。町内会にそのためのツールを提供している自治体もあります。積極的に丁寧な情報発信をしている模範的な町内会の例もあります。しかしこのようなサイトを作成し運営できる人材が、今は町内会にほとんどいないことが大きなネックになっていると思います。

次に、町内会の役員の多くは、ITを使いこなせる現役世代ではなく、ITは不得意な年配の人たちです。ネット発信の必要性を強く感じるか、今までのままで良いと感じるか、という町内会の役員の意識の差も存在します。ネット世代は今後次第に増えますので、その意識の差は時代と共に解消されていくと思います。その点でこれからのネット世代の活躍に希望を持っています。他方、地域社会に関心がない人びとも増えていると思われます。「隣は何する人ぞ」という社会状況はかなり一般的なので、楽観視はできないでしょう。現在はネット社会なので情報提供をする側の問題は減少すると思います。むしろ地域や町内会の情報を受ける側の無関心の増大についてはどう思われますか。どうすれば住民が地域の事に関心を持つようになるでしょうか。

Oさん)
ホームページを立ち上げるのが手間であれば、30〜40代が主な利用者層となっているFacebookページでの情報発信とかでも良いかもしれないですね。

「地域や町内会の情報を受ける側の無関心の増大」について、これは町内会に限らずメルマガやブログ、新聞やテレビも同じだと思うのですが、やっぱり受け取る側が興味を持ち続けるように、発信者はコンテンツを調整し続ける必要があるのではないかなと思います。発信したり受け取ったりする手段自体は今までよりも進化していると思うので、あとはどれだけターゲット住民にとって、魅力のあるものにできるかどうかという感じですかね。

自分にあてはめてみると、地域に関心を持つきっかけの一つとして、そこが「子育ての場である」というケースが有ると思います。例えば、自分の子供たちが日常的に使う通学路や公園は、安全で安心な環境であって欲しいと思うので、そういった部分を皆で整備・維持・進化させていきましょうという切り口や、子供たちを集めてものづくりを楽しむとか、そんな取り組みがされていると自分も興味を持つような気がしました。

中島)
そうですね。Facebookでの情報発信をしている町内会はありますが、僕の近隣の町の例ではあまり活発に続いていないようです。やはり年齢層が偏っているせいでしょうか。原因を見つけて改善をする余地はあると思いますが。次に「無関心」に対しては、住民が共通な興味関心をもつ内容や活動が提供されると良いですね。ものづくりにもいろいろありますし、それを教えてくれる大人が必要です。しかし多くの町内会執行部は、多様な活動や楽しみを子供に提供できる新住民が、町内や近隣の町にいることを知りませんので、人材を発掘する必要があります。新住民の中からいろんな特技を持っている住民を発掘し依頼して、イベントの実施に繋げないといけません。それを実施するには、現在ボランティアで活動している町内会執行部とその体制だけでは簡単ではないでしょう。「新しい仕掛け」が必要でしょうね。Oさんのような新住民に、町内会などのコミュニティに参加してもらうには、新しい仕掛けを作り出すことが、これからの課題ではないかと思います。クチコミは切っ掛けになっても、動いてもらう実働部隊が要りますからね。

Oさん)
そういえばうちで奥さんとしていた話ですが、僕らの世代って親の世代に比べると手芸や工芸がそこまで得意な人って多くないと思うんですよね。で、自分たちが出来ないから子供にも教えることはできなくて、この世代間で一気にそういう文化というか技術が薄れちゃうのかなと。
そういったところから考えてみても、年配の方々が得意分野を孫の世代に伝承していくような取り組みを町内会とかで実施すると、自ずと世代間のコミュニケーションも増えそうな気もしました。

中島)
最初のOさん議論は地元住民や高齢者と新住民の間の「分断」の話。最後のOさんの議論は高齢者とOさんおよびその子供の間の「分断」の話でした。二つ目の分断に関連して言うと、今後、何でも既製品を買って利用するのではなく時には自分の手で何かを作って、他の動物とは異なる「人間として必要な能力」を維持する努力が必要だと思います。つまり既製品の利用ばかりではく、生きるために最低限必要なものは自分の手で何とか作ることも必要ではないでしょうか。そうしないと大げさなようですが、大災害に見舞われたら生きていけない人間になり、何千年もかけて培ってきた知識や知恵をロボットに入力したら、その後そのような蓄積を失ってしまう人間になりませんか。従って二つ目の分断もある程度は埋めなきゃならない気がします。昔に戻るような話とは異なります。つまり人間が自分の体と頭を使って生きる力を維持しなきゃならない、ということだと思います。そのためには人間はある程度、体と頭を使って工夫する能力(手芸や工芸)なども、町内会の年配の方々から学ぶと良いでしょう。実際にそのような試みは、核家族の家庭ではできないこととして、町内会の活動として高齢者と子供の間で行われています。例えば昔の遊びを教える活動などです。些細な例ですが、それは言わばビッグファミリーである町内会の継承は大切な意義を含んでいるのかも知れません。このようにして三世代のコミュニケーションが実現すると思いますが如何でしょうか。

今回のインタビュー記事は一応これまでですが、議論はもちろんまだ十分ではありません。今後も時折インタビュー記事を続けて、町内会の発展の方向を探りたいと思います。一言主張したい方がいらっしゃれば、ご連絡いただけますか。インタビュー記事を一緒に作りましょう。(中島正博&Oさん)

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