新しいかたちのゴミ拾い活動~コミュニティで交流する楽しさ

朝のNHKニュース(7月21日)でゴミ拾い活動を楽しんでいる若者たちが紹介されました。若者たちによるゴミ拾い活動が近年、全国各地で広がっています。多くの活動の中でも認定NPO法人グリーンバードは2002年に東京・原宿で活動を始めたゴミ拾い団体です。彼らのゴミ拾いのイメージは「オシャレで、楽しくて、カッコイイ」だそうです。この団体の活動は北海道から沖縄まで全国に広がり、現在は国内外に80チーム、参加人数は年間3万人ほどの組織に成長したそうです。

ゴミ拾いだけが目的であれば一人でも実践できます。しかし一人でゴミ拾いを続けることは、私も時々行っていますがある種の苦行です。グリーンバードの活動が広がったのは、人びとが集まってゴミ拾いをするので、いろいろな人と出会い交流できるからです。ゴミ拾いが、人びとのコミュニケーションや交流のツールになっているのです。ゴミ拾いがいくら立派な社会貢献であっても、楽しくなければグリーンバードのように全国に広がらないでしょう。

やはり環境活動や社会貢献活動を続けるためには、楽しさなど何らかのメリットが必要であることが良く分かります。「環境保全」という客観的な必要性と倫理的な動機のみでは、環境活動はなかなか広がらないと思います。活動することが、一人ひとりの何らかの利益(楽しさ)に繋がるから、人は行動を起こし、社会で広がり、時間的にも長続きします。そしてゴミ拾いが社会貢献として認められ、現代社会に欠けがちな、若者の自己肯定感に繋がるのだと思います。

グリーンバードの活動は事前の登録は不要で、集合してから解散までの約1時間活動をして、最後に集合写真を撮影して解散する。そして次回の参加は強制することもない。自分の参加したい時に参加する。このような「頑張り過ぎない、義務化しない」という気軽さとゆるさを大切にしてきたので、活動を20年間続けることができたそうです。そしてグリーンバードの人たちは、ゴミ拾いを社会貢献の第一歩として、さらに地域にとって欠かせない、コミュニティをつくり支える活動に広げたいと考えているようです。

ゴミ拾いはボランティアによって自由に行われますが、町内清掃は町内会や自治会に所属する住民が、近隣の公園や住宅地域を定期的に清掃する活動です。ゴミ拾いはポイ捨てが目立つゴミの多い繁華街の道を中心に行われるでしょうし、他方の町内清掃は市民が自分たちの住む地域を面的にきれいにする活動であり、両者の活動の対象はあまりオーバーラップしないと思われます。またゴミ拾いはゴミの多い海岸や川や道など公共的な場が主な対象になるでしょう。町内清掃は日本全国の居住地域で、ほぼくまなく行われています。ゴミ拾いと町内清掃の活動は補完し合える関係でしょう。

若者たちが中心のゴミ拾いは、今の世相を反映したボランティア活動の形でしょう。例えば震災や洪水時などのように、ボランティア活動は全国的に活発になっています。逆に、町内会や自治会の活動は全国的に衰退しています。若い住民が町内会を敬遠して、加入者は全国的に漸減しており、加入率はすでに50%を切っているかも知れません。町内会の団体が敬遠される理由と、グリーンバードのようなボランティア活動が広がる理由は、いわば裏表の関係でしょう。つまり、ボランティア活動の場合は、グリーンバードが長年大切にしてきた「頑張り過ぎない、義務化しない」、という気軽さ・ゆるさ(自由)に象徴されているでしょう。逆に町内会・自治会の場合は地域活動が義務付けられている、という窮屈さが若い住民に敬遠される大きな理由だろうと思われます。盛んになっているボランティア活動は、今後の町内会の在り方を考えさせる上で示唆を提供しているように思います。(中島)

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