「広げよう見守りの輪~心でつなぐ、地域でつつむ認知症」と題して、わたしの町の人たちが参加して話し合いをしました。その趣旨は、誰でも認知症にかかる可能性があるので、地域の人たちがつながって支え合い、認知症にやさしい地域づくりについて考える、というものです。今回は3回連続講座の第1回で「私たちができることを一緒に見つけてみませんか?」です。学区社会福祉協議会など地域の福祉関連団体の共催で、場所は無印良品広島アルパーク「まちの保健室」のオープンスペースでした。私たちは3つのグループに分かれて話し合いや作業をしました。
先ず広島市の在宅生活指導員が認知症の人の「世界」について短い話をしました。ガスコンロの火をつけたことを忘れていた、今朝の薬はもう飲んだっけ、ご飯はいつ食べたっけ、など私たちの「あるある」経験によって、自分自身の認知症の可能性について考えます。このように考えれば、私も自分事として認知症に向き合えるかも知れません。認知症の症状が現れてくると、過去のいろいろな経験が次第に少しずつ薄れていくようです。加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れには違いがあるそうです。例えば、一週間前に旅行に行った先の出来事の一部を忘れたり、ヒントを言われて旅行に行ったことを思い出したりするのは、加齢によるもの。しかし、旅行に行った出来事の全部を忘れて、ヒントを言われても旅行に行ったことを思い出せないのは、認知症によるもの。講座の参加者にはこのような経験はなく、まだ大丈夫そうです。
次は講座の参加者の出番です。もし認知症の記憶障害が自分や家族・隣人に現れたら、私たちは生活の中で「どんなことに困るか」と考えて、各自が青色の付箋に意見を書きます。そして認知症の人がいたら、自分には「どんなサポートができるか」と考えて、ピンクの付箋に意見を書きます。書いたら同じグループの人たちに見えるように、大きな模造紙に貼り付けます。貼り付けた付箋を見ると、グループの中で似た意見が幾つかあるので、グループ内でそれをまとめます。まとめたら各グループが参加者全員に対して発表します。
この作業の結果、困ることとして挙げられたのは例えば、さっき言ったことを忘れる、薬を飲むのを忘れる、料理の手順が分からなくなる、食べたことを忘れる、カギや通帳の置き場所が分からなくなる、カギをかけ忘れる、日付や曜日が分からなくなる、約束を忘れる、目的地に行けない、帰り道を忘れる、買い物ができない、電気製品の操作が分からない、外出時の置き忘れ、感情的な受け答え、お金の管理ができない、介助者のストレスがたまる、モノを失くして人のせいにする、人の名前や顔を思い出せない等でした。
次に認知症の人に対して、自分ができるサポートとして例えば、優しい気持ちで対応する、約束したら誘いに行く、買い物について行く、一緒に考えてあげる、声をかけて一緒に外出する、近所の人を訪ねてお喋りをする、犬の散歩の途中で立ち寄り声をかける等でした。一般的な心がけとしては、よく話を聞く、笑顔でうなずく、ゆっくりしたペースで行動する、スキンシップを心がける、さびしくさせない、怒らない・否定しない、役割が果たせるよう支援すること等です。介助者のサポートには常に優しさが求められますが、認知症の本人が頑な心の壁を作っている場合は、優しさが時に拒否されるようです。また肉親の間では互いに感情的になりやすいことも大きな課題です。
最後に、先の在宅生活指導員がまとめの話をしました。認知症にやさしい地域づくりのために私たちができることは、優しい見守りと優しい声かけではないか、というまとめでした。この講座は、今後の第2回(5月)と第3回(6月)を経て、どうやら「見守りと声かけ」ができる地域づくりを目指しているようです。第2回は「認知症について学びを深めよう」、第3回は「私たちが地域でできることは何だろう」というテーマです。その話し合いの様子をこのサイトで後日ご報告します(中島正博)