6. シェアリングシティにおける都市ガバナンスの事例と政策

Szs [GFDL または CC-BY-SA-3.0], ウィキメディア・コモンズ経由で
シェアリングシティに関する連載記事の第5回では書籍『Sharing Cities(シェアリングシティズ)』(出版:Shareable)第11章の都市のガバナンス(統治)の理論的な背景について説明しました。第6回の記事では都市資源のコモンズ化とそのガバナンスに関するイタリア・ボローニャ市(pp.254-255)の事例と政策の翻訳を以下に紹介します。

イタリア・ボローニャの都市コモンズの管理と再生
原文: LabGov(the LABaboratory for the GOVovernance of the City as a Commons)

課題
都市管理には決定的な法律上のギャップがあります。都市の公共空間、公園、放棄された建物、市民生活に直接影響するその他の都市コモンズ(民間所有施設も含む)などを、市民が改善したり維持したりするのは違法であることが多いのです。この問題を軽減するためには、制度的な技術と市民の協働を含む条例が必要です。

解決法
2014年にボローニャ市は「都市コモンズの維持と再生のための、市民と都市の間の協働に関する条例」を承認して、「コモンズとしての都市」プロジェクトを開始しました。その条例とプロジェクトは、ボローニャ市とそれ以外の都市コモンズを、市民が直接維持するために、新しく重要な法的かつ管理上の枠組みを提供しました。

その背景には、Fondazione del Monte di Bologna and RavennaLabGovと市内の改革者たちが、都市コモンズの管理のための共同統治の方法を適用して実施した、現場での2年間の実験がありました。主な都市資源(コモンズ)としての植生空間や空き家などと市民からなる、3つの「都市実験室」を通して、多くを学ぶことができました。その研究の成果が、都市と市民が都市コモンズを共同管理するために、どのように協働できるかを説明する、世界で最初の条例と管理プロセスでした。

その条例をサポートするカギとなる道具は「協働協定」です。協働協定は問題になっている特定のコモンズと、市政府を含む利害関係者が協働するルールを定めます。協働協定をデザインして契約にサインできるのは、個人、非公式のグループ、コミュニティ、非営利組織などです。彼らは、都市コモンズの短期の介入(例えば改善・利用)と長期の管理の両方に関する規則を作ります。その条例は都市の協働統治のために、コミュニティの協同組合、近隣の協会、住民の居住区の共同体など、非常にローカルな組織の設立を促進します。また、その条例は、市政府から市民に対して、技術と資金の移転による支援を提供します。さらに、条例は次の5つのカテゴリーに含まれる市民の行動を促進します。それは、社会的な革新と協働的な奉仕、都市の創造性、デジタルの革新(例えばデジタル・プラットフォームやオープンデータ)、協働的なコミュニケーション、そして都市のコモンズ化を促進する協働的な手段と実践です。

結果:

  • ボローニャ市で条例が採択されてから180以上の協働協定の契約が成立しました。その条例と協働協定と関連する行政プロセスは、世界的に「行政の良い実践例」として認められました。また条例は、広範な都市の協働管理プログラムをデザインするきっかけになりました。その条例の成功に基づいて、ボローニャ市は“Collaborare e Bologna” (CO-Bologna)という以下の二つの目的をもつ革新的な公共政策を開始しました。

・社会的革新と協働的経済を通して、都市コモンズを再生する幾つかのプロジェクトと政策を結び付けること。主な業績にはPilastro および Incredibol のプロジェクトがあります。

・都市コモンズの運動を実験し続けるために、運動のプロセスと組織的な基礎(インフラ)の原型をつくること。それを確実にするためにCO-Bolognaは、ボローニャで自分の着想を実行したい市民は、誰でも参加できる開かれた協働として設計されています。

  • プロジェクトの長期的な目標は、強固で協働的なエコシステムを持つ共同都市として、ボローニャを改革する基礎を築くことです。都市の管理と再生を発展の土台にして、ボローニャは、ローカルな協働経済を発展させ、公共と民間とコモンズの部門間の協働を促進して、人びとの基本的なニーズを満たす方向に向かって努力するでしょう。

参考資料

(翻訳:中島正博)

以上がイタリア・ボローニャ市の都市コモンズの管理と再生に関する紹介の翻訳です。ボローニャには、このように都市コモンズの利用・維持・再生に関する包括的な枠組みとして条例があります。日本にも、包括的ではありませんが、市民が都市コモンズを改善・利用・管理する事例があります。例えば町内会などの地域団体が街区公園を再生する活動を自治体が支援する事例、民間所有の空き家をコミュニティカフェやまちおこしに利用する事例などは数多くあります。道路、河川、水辺、公園などの「里親制度」なども行政と協定を結んで、住民が公共空間を美化・維持する事例です。都市空間、都市緑地、利用されていない建物などを柔軟な発想で、市民が協同で積極的に利活用できる包括的な法的枠組みがあれば良いと思います。自然資源のコモンズを共同利用することによって、利用者のコミュニティが生まれ成長したことは、過去の日本の農林漁業の歴史が示しています。今後は都市もコモンズ化することにより、都市に無数のコミュニティが生まれ成長すればよいと思います。(中島正博)

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