9. シェアリングシティのコミュニティで「修理カフェ」

Photograph: by Ilvy Njiokiktjien

書籍『Sharing Cities(シェアリングシティズ)』(出版:Shareable)第7章のテーマは「廃棄物」です。廃棄物を有用資源に変えて利用する「循環経済」の観点に立てば、いろいろな都市廃棄物はコモンズになりますし、その廃棄物を資源に変える社会システムもコモンズです。例えば、フードバンクや食料廃棄物のコンポスト利用なども食料のコモンズ化の例でしょう。今回の記事では、壊れたモノを修理して利用する社会システムの「修理カフェ」を普及させた、オランダの事例(pp.172-173)を第7章から選んで翻訳し以下に紹介します。

修理カフェ財団がモノを直してコミュニティを創る

課題
廃棄を削減し抑止する方向に、人びとの行動を変えることは容易ではありません。例えば衣服、生地、おもちゃ、自転車、家具、家庭の電気器具など、余りにも多くのまだ使える製品が、廃棄物として捨てられているのは、人びとが壊れたモノを修理する実用的な知識や器具を持っていないからです。これらのモノのいくらかはリサイクルされますが、多くは埋立地に捨てられます。しかし、無数のコミュニティには、壊れたモノを生き返らせる知識や技術をもつ人びとがいます。それでは、彼らの技術を共有するために、私たちはどのようなシステムを創れば良いのでしょうか?

解決法
2009年にオランダのアムステルダムで、マーティン・ポストマは地元のコミュニティの中で、環境に何か良いことをして、そして社会的な関係を築くために、まさに最初の「修理カフェ(Repair Cafe)」を設立しました。修理カフェは、コミュニティのメンバーの中でモノを修理する技術を持つ人びとの繋がりを創り、彼らは月に一度近隣の便利の良い所で、何か修理するモノが必要になりました。修理の専門家たちは、彼らの知識をコミュニティのメンバー達と共有して、コミュニティの人たちはコミュニティの助けが少しあれば、修理は可能で普通はそんなに難しくないことを学びました。人びとは古いモノの代わりに新しいモノを購入するよりも、それを修理することの価値をじかに経験するようになりました。

結果

  • 「修理カフェ財団(Repair Café Foundation)」の設立者のポストマは、「現在世界25か国に1000以上の修理カフェのグループが活動している」、また「平均して、グループは月に一度会って、25程度の物品の修理をして、その成功率は70パーセントです。『国際修理カフェ(Repair Café International)』の下では、毎月18,000の製品が修理され、年間20万以上の製品が修理されています。もし一つの製品が1kgだとすれば、修理カフェグループは、地球上から毎年20万トンの二酸化炭素の排出を阻止している」と言います。
  • 新たに修理カフェを始める際の青写真になるスターター用の手順書は、修理カフェ財団が最初無料で提供していましたが、その財団の運営を持続可能にするために、財団はいくらかの収入が必要になりました。現在その手順書は、ウェブショップを通して、自由な額の寄付により入手できます。無料から有料へ変えたことは、財団にとって一つのチャレンジでしたが、殆どの人びとは手順書のために、少額の寄付を喜んで払っています。ボランティアの活動を促進する団体は、活動を維持するための収入が必要であり、手順書の販売はそのコストを幾らか賄うために良い方法です。
  • 修理カフェ財団は諸々の団体や会社と密接な関係を築いてきました。その団体や会社は地元の修理カフェを組織する人たちに、製品の値引きやその組織に毎年寄付するなどの特典を提供しています。

参考

(原文:Darren Sharp 翻訳:中島正博)

以上が修理カフェ発祥の国、オランダの修理カフェ財団の紹介です。偶然ですが今年の現在10月13~21日はInternational Repair Café Weekです。多くの種類の生活用品が修理されて、永い間使用されるのは素晴らしいですね。さらに、地域コミュニティで修理カフェを営んでいることから、昔は当たり前であった「修理」が、持続可能な社会の文化として定着する可能性が期待できます。

私たちにも、家電製品が壊れた時、お店の人の「修理するより新品を買った方が安いですよ」という返事に、何度も嫌な思いをした人が多くいると思います。製品の部品を保存する期間が限られているのがその理由だそうですが、そんな使い捨ての消費生活が長続きするとは思えません。もし良い品物であれば、修理してでも永い間それを使用すると、品物への愛着も湧くし、私たちの「モッタイナイ」の良心を傷つけなくて済みます。また私たちの子孫の資源も無駄にしません。

「現在世界25か国」に修理カフェがあると紹介されているので、日本にもあるか早速調べてみました。日本には5つの団体があるそうです。またフェイスブックにはRepair Caf’e Japanのグループが存在します。しかし、これらの活動が定着しているかどうか、ネット上では不明です。他にリペアエコノミー協会が今年2月に設立されましたが、それはスマートフォン等の電子機器に対象を限定しているようです。オランダのように持続的なコミュニティの活動として、多種多様なモノを修理の対象にしている修理カフェは見当たりませんでした。どうやら世界に広まっている類の修理カフェは、日本にはまだ根付いてないようです。但し、日本には「日本おもちゃ病院協会」があり、壊れたおもちゃを全国各地で無料修理する、1407名(2017年3月現在)のおもちゃドクターが、ボランティア活動を展開しているそうです。広島市のある町内会でも、おもちゃ病院の活動について聞いたことがあります。修理の文化が日本に根付くには、もう少し時間がかかるのかも知れません。(中島正博)

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