カフェで交流文化を促進する~充実してきた地域コミュニティの交流

コミュニティづくりに明るい将来を予見させる動向があります。地域の住民同士が交流するカフェやグループが全国で増えています。社会で人間関係が希薄化している現状への危機感の表れであり、その現状を改善する努力だと思います。社会の変化により危うくなった人間の存在に起因しており、福祉などの「生活の質」の向上を目指して、地域コミュニティの交流の仕組みが、より充実する現象が近年起きていると私は感じています。例えば、子ども食堂、◯◯カフェ、□□サロンなどは、今の時代のニーズに対して、新しい形の交流で応えようとするものでしょう。

先ず、急増している新しいタイプのコミュニティの仕組みとして「子ども食堂」があります。日本社会の貧富の格差拡大の結果、貧困家庭の子どもの割合(2013年6人に1人)が増えて、それが子どもの食事のあり方に及ぼす悪影響を緩和する目的で、2010年代から子ども食堂が全国で増え始めました。子ども食堂を支援する民間団体の調査では、その総数は2018年に全国で2000か所を超えています。その食堂では子どもが無料か低額で食事ができると同時に、大人も低額で食事ができます。大人に宿題を見てもらったり交流したりして、地域コミュニティの交流の場の役割も果たすようになりつつあります。食堂の担い手はさまざまで、ボランティアの主婦仲間やNPOが運営して、企業や社会福祉協議会と連携するケースもあります。食堂は週に一度から月に一度くらいの頻度で開店します。場所は、公民館児童館などの公的施設のほか、事務所、空き店舗、民家、飲食店、医療機関や介護施設の交流スペース、寺などです。最近、中国地方の5県は子ども食堂を支援する関連施策を打ち出しました。広島県は県内の約40か所の子ども食堂に、食材を提供するフードバンクの設立を表明しました(中国新聞2018年5月16日)。このように子ども食堂は全国に広がっており、子どもの貧困対策と同時に、地域コミュニティの多世代の交流の場としても期待されます。

次に、一般に「コミュニティカフェ」と呼ばれる施設も全国で増えています。コミュニティカフェは現代社会の人間関係の希薄化を背景にして、地域の人びとの居場所、繋がりや交流を目的にして、2000年代後半から急速に増えました。運営はNPO法人、任意団体、個人、ボランティア、学生グループなどが担い、飲食を提供しながら、住民が広く集い合えるように、イベントやワークショップを行うことが多いです。少し古いですが「コミュニティカフェの実態に関する調査」(2011年)があります。また、「全国の『コミュニティカフェ』一覧」(2018年)のサイトもあり、各県のコミュニティカフェの名前、市町名、電話番号、カフェのカテゴリーが掲載されています。但しこのサイトは、全国のコミュニティカフェを完全には網羅していないようです。カテゴリーはコミュニティスペース、子育て、高齢者福祉、障がい者福祉、まちづくりなど多様で、オーガニックやスローカフェなど環境系のものもあり、運営者の思いが表れています。「全国コミュニティカフェ・ネットワーク」がFBブログで情報提供を行い、例えばコミュニティカフェの新規開設の講座も実施しています。私の先の記事で「協同労働モデル事業」の紹介をしましたが、コミュニティカフェもその協同労働の候補事業の一つでしょう。コミュニティカフェは交流の促進という現代的な目的を掲げていますが、一般の無数の飲食店の中には結果的に、地域コミュニティ交流の効果を担っている店は多いはずです。

さて多くの高齢者にとって、近い将来の最大の心配事は、自分の認知症かも知れません。2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が、認知症を患うと推計されています。2017年に認知症か、その疑いが原因で行方不明になり、警察に届け出があったのは、全国で1万5,863人でした。5年連続の増加傾向です。そのような世情を反映して、最近急増している交流の場に「認知症カフェ」があります。認知症患者として支えられる人びと、その患者を支える家族、また認知症を予防したい人びとが交流する場です。多くは病院や介護所が主催しますが、最近増えているのは地域住民が主催するものです。広島市内の認知症カフェは今年9月末で77か所(昨年の2倍)、そのうち住民主催のカフェは12か所(半数は本年開設)です。広島市は2016年度から認知症カフェの運営を支援しており、広島市地域包括ケア推進課は小学校区に一つの認知症カフェができるよう応援するそうです(中国新聞2018年10月14日)。

一般の高齢者向けのサロンも増加しており、内容を多様化させながら発展しています。自治体や社会福祉協議会が協力しており、住民同士の交流が最大の目的ですが、その内容は食事会、お茶会、おやつ作り、映画鑑賞会、グラウンドゴルフ、趣味の時間、囲碁、太極拳、健康体操などとさまざまで、できるだけ多くの住民が興味を持ち参加したくなるよう、運営者は知恵を絞って手作りで行っています。町内の集会所で開催するケースが多いですが、ボランティア仲間が自宅や古民家で開催するサロンもあるようです。広島市は多様な団体を対象にして、「地域高齢者交流サロン運営事業」としてサロンの実施を支援しています。さらに今年から、地域に暮らす人々が、健康寿命を延ばし、住み慣れた地域で安心して生活できるまちづくりを目的にして、「高齢者いきいき活動ポイント事業」を開始しました。高齢者が参加できる交流サロン、町内会の祭り、趣味のサークル、フィットネスクラブに至るまで広範にわたり、それらの活動に参加すると現金化できるポイントを高齢者に提供するものです。高齢者の引きこもりを防ぎ、社会参加や交流を促し、健康を促進する結果として、介護・医療費の抑制を目指しているようです。このポイント制度はおおむね住民に好評で、高齢者の活動参加の頻度は増えています。

ところが、これまで紹介した住民の交流機会の増加と矛盾する現象があります。老人クラブの会員の減少です。広島県内の老人クラブ数は2008年の3,108(19万5,189人)から2017年の2,449(13万6,809人)に減少しています(中国新聞2018年2月14日)。残念ながら、それはコミュニティづくりの明るい将来を示唆するものではありません。減少の原因は会員の高齢化と新規加入者の伸び悩みです。新規加入しない理由は、60歳で老人とは思わない心理や、雇用の定年延長の影響が大きいでしょう。老人会が実施する定番の活動が、老人会の年齢層の人たちのニーズと合わないかも知れません。現代の価値観の多様化に応じて、老人会の活動の在り方を今後工夫することが必要でしょう。このサイトの過去の記事で紹介した「おもちゃ病院」や「修理カフェ」、「協同労働」、「生活支援」による支え合いなどの地域ボランティア活動も、活動を多様化する選択肢になるでしょう。

先週のブログで「修理カフェ」を紹介しましたが、さまざまなニーズに応じてカフェや交流創出が今後も生まれると思います。私も月に一度「読書カフェ」か「哲学カフェ」に参加しています。地元に限らず地域の範囲を広げると、フェイスブックなどの交流サイトにはさまざまなイベントへのお誘いがあります。これからも大事なことは、社会のニーズを発見して創意工夫で交流の機会を創出することであると思います。そうすれば、人間関係が希薄化する現代の危機を乗り越える大きな力になるでしょう。また、町内会の加入率の減少について以前に記事を書きましたが、今回の記事のテーマである交流機会の創出・増加との関連について、今後さらに考える必要がありそうです。なお私のブログで「シェアリングシティ」の紹介をしましたが、都市の資源を共有する今回の記事の事例は、まさに身近なシェアリングシティの表れであると思います。(中島正博)

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