インターネット空間で増大する危険性

インターネットによるコミュニケーションの普及に伴って、ネット利用に起因する犯罪やトラブルが増えました。メール、SNS、ショートメッセージ、ブラウザなど、一般的なネット利用の場面で出くわす、悪意ある者が仕掛ける詐欺行為です。そのような行為が現れて、長年の間に私たちもそれを目にする経験を重ねて、ネット上の詐欺行為をほぼ見破られるようになりました。しかし技術や社会の変化に伴って、新たな詐欺の手法が出現するので安心はできません。そのような詐欺行為ではなくても、ネット上の広告の中には半ば強引に、商品の購入に巧みに導こうとするものがあります。ネット上に広告を潜ませて、金儲けをしようとする仕組みです。そのような広告の仕掛けに私は腹を立てながらも、購入してしまうことがあります。そのような仕掛けはネット広告である程度すでに常態化しているのかも知れません。

このような問題の社会的な背景として、現代社会の諸悪の根源の一つと思われる、利益最優先の商業主義があるように思います。それは悪質な広告や不正を生みかねません。事業者の不正が発覚して会社や団体の責任者が頭を下げて謝罪する場面が、ニュース報道では日常茶飯事になりました。そのような商業主義の風潮は、悪質な広告や商行為が増える原因であると思います。

インターネットの世界には、なぜこのような詐欺行為や悪質な商行為が存在するのでしょうか。パソコンやスマートフォンが使用される多くの場合、複数の人びとが一つの機械を使用するのではなく、一人が一つの機械を使用します。つまりメールやSNSで他人とコミュニケーションをしたり、ブラウザによる広告などで商品を探したりする時は、一人で機械を使います。そんな時に見知らぬ人からメールやSNSが届いたり、悪質な広告に出くわしたりします。一人で機械を使っているために、メールや広告への対応に迷っても、その場ですぐ他人の経験や知恵を借りにくい状況にあります。詐欺メールは短時間に対応することを受信者に要求するので、あせってしまい慎重な対応ができなくなります。またインターネット空間では、詐欺行為や悪質広告に対するネット運営者による監視も十分に行われていません。

またインターネットでは、メール・SNSの送信者の個人情報は限られています。リスクを伴うネットの世界では、一般に発信者自身が個人情報を制限するので、受信者が受け取る情報量も限られます。ところがパソコンやスマートフォンの画面の中の限られた情報だけで、送信者に対応しなければなりません。インターネットの世界はそのように情報量が限定されますから、ネット世界のコミュニケーションはひどく不完全であり、受信者が適切な判断をするための情報が不十分です。それを忘れるとトラブルを背負うことになります。

このようなインターネットの世界に比較して、リアルなアナログ世界の対面コミュニケーションの場では情報量が格段に豊富です。コミュニケーションの相手の全体、つまり顔、目、表情、声、しぐさ、雰囲気などが現れるので、受信者が対応を判断する際の情報量が多いのです。インターネット広告のように、相手が一方的に発信する文字や言葉に対応するのではなく、自由な双方向のコミュニケーションも可能です。但し、コロナ禍で普及したオンラインのミーティングはある程度リアルなコミュニケーションに近づきますが、リアルに近いからこそ、AIなどのデジタル技術を利用すれば、なりすましによる新手の犯罪や詐欺行為が生まれる可能性があるでしょう。

以上のことは、私自身が詐欺メールや悪質広告などに遭遇しながら考えました。デジタル技術には利便性・効率性などのプラスの効果がある半面、常にマイナスの危険性もあることを考えて、そのリスクに備える努力が欠かせないと思います。個人や団体レベルでも、さらに国家レベルの安全保障でも、世界は危険が増していることを憂慮しています。(中島正博)

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